感染症

低ガンマグロブリン血症患者におけるマイコプラズマ・ウレアプラズマによる関節炎

小児期にリツキシマブ投与を受けたIgG低値の若年患者が原因不明の関節炎・炎症反応高値のため紹介となり、原因が分からず論文検索したところマイコプラズマ・ウレアプラズマによる関節炎の報告が多かったため勉強。

起因菌

M.pneumoniae
M.hominis
U.urealyticum

上記3菌種の報告が最も多い。
その他にM.genitalium、M.felis、M.oraleなどの報告もある。

概要

マイコプラズマ・ウレアプラズマはヒトの呼吸器系・生殖器系から検出される。
低ガンマグロブリン血症患者ではマイコプラズマは関節炎、UTI、肺炎、蜂窩織炎を起こす。
低ガンマグロブリン血症患者のうち91人中21人(23%)が化膿性関節炎を発症し、そのうち8人(38%)がマイコプラズマ・ウレアプラズマが原因であった。大関節・小関節とも感染し、単関節・少関節・多関節炎どれもあった。多くの患者が破壊性関節炎だが、非破壊性の再発性多関節炎を呈した患者もいた。

原発性低・無ガンマグロブリン血症患者18名の報告

18人の先天性低ガンマグロブリン血症かつマイコプラズマ・ウレアプラズマによる関節炎の患者。全例がIgG200mg/dL以下。ほとんどの患者が単関節炎で膝、肩、肘、股関節だった。診断と適切な治療が遅れると、進展し多関節炎になった。指関節は通常侵されなかった。関節液は濁った黄色、もしくは膿性が多いが、透明な場合もあった。
M.pneumoniae、M.hominis、Ureaplasma urealyticumが多かった。単関節炎患者は熱がなく、微熱程度で、好中球上昇もなく、全身状態が保たれていることが多い。

98例のX連鎖性無ガンマグロブリン血症の報告

98例のX連鎖性無ガンマグロブリン血症(XLA)患者(2000年-2020年)、45(45.9%)に関節病変があり、40.8%がXLA診断前から症状があり、54.1%は関節症状なし。関節病変がある患者は診断時の年齢が高く、IgGが低かった。膝関節80%・股関節17.8%・足関節13.3%が最も多く、小関節炎(<4関節)88.9%と多関節炎11.1%より多かった。発赤・圧痛が最も所見80%で、24.4%が活動制限、8.9%が肢体不自由であった。32名の画像所見では関節液貯留53.3%、滑膜炎15.5%、軟部組織腫脹15.5%が最多の所見だった。17名が抗菌薬とIVIGで治療され、有効率は70.6%、28名はIVIGのみで有効率は67.9%でった。
この報告では起因菌の同定まではされていなかったが、XLA患者に関節病変が多いことがわかる

検査

ほとんどの報告では普通の培養は陰性であり、PPLO培地で培養陽性となった例がある。
多くの症例はPCR(16S rRNAなど)を用いて診断されている。
低ガンマグロブリン血症患者の多関節炎ではマイコプラズマ・ウレアプラズマを疑って培養・PCRを提出しないと診断困難になる可能性がある
画像検査では化膿性関節炎の所見で、関節液貯留・関節破壊を認める。

治療

治療はドキシサイクリン、モキシフロキサシンなどが用いられ、治療期間は数週から数カ月間行われることが多い。IgG低値に対してはグロブリン補充療法が行われる。

〈参考文献〉
Mycoplasma hominis septic arthritis: two case reports and review. Clin Infect Dis. 1994;19:1067-70.

Mycoplasmal arthritis in patients with primary immunoglobulin deficiency: clinical features and outcome in 18 patients. Br J Rheumatol. 1997;36:661-8.

Retrospective study of 98 patients with X-linked agammaglobulinemia complicated with arthritis. Clin Rheumatol. 2022;41:1889-1897.

Mycoplasmas and ureaplasmas in patients with hypogammaglobulinaemia and their role in arthritis: microbiological observations over twenty years. Ann Rheum Dis. 1994;53:183-7.

Ureaplasma septic arthritis in an immunosuppressed patient with juvenile idiopathic arthritis. J Clin Rheumatol. 2015;2:221-4.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。