内分泌

卵巣甲状腺腫 struma ovarii

〈概念〉
成熟した甲状腺組織を主成分とする特殊または単細胞の奇形腫。
基本的に甲状腺組織が組織全体の50%以上を占める場合に卵巣甲状腺腫という。
卵巣奇形腫の約5%を占める。
良性と悪性に分類される。
5-8%甲状腺機能亢進症を伴う。
 *稀な甲状腺機能亢進症の原因として甲状腺腫を知っておく。
40-60歳に発症することが多いが、10歳で発症したという症例もある。

〈症状〉
疼痛を訴えることがある。無症状で偶発的に見つかることも多い。

〈検査〉
腹部超音波:不均一な腫瘍として描出される。超音波で特異的な所見はない。たまに腹水がある。
血液検査 サイログロブリンやCA125の上昇がみられることがある。
123I 甲状腺シンチグラフィ 甲状腺と同程度の集積がみられる。

123I 甲状腺シンチグラフィで卵巣腫瘍に集積を認めた甲状腺機能亢進症の症例

病理
 免疫染色でサイログロブリンが陽性だと甲状腺起源だとわかる。
 甲状腺がんの所見(乳頭癌が多い)が5-37%でみつかる。
 5cm以下の腫瘍だと稀。75%の悪性は16cm以上だった。
  転移は稀でさらに5%程度。転移部位としては肺・骨・肝・脳がある。

〈診断〉
基本的に卵巣腫瘍術後の病理で偶発的に診断されることが多い。
数ヶ月続く甲状腺機能亢進症の女性で甲状腺腫大がなく、頸部に放射性ヨウ素の取り込みがなく、血清サイログロブリンが検出される場合は疑う。
 123Iや131Iを用いて腫瘍の甲状腺組織が機能性か調べる。

〈治療〉
第一選択:病側卵巣切除(もしくは両側卵巣切除±子宮摘出術) 
 *甲状腺機能亢進症がある場合はMMIやβブロッカーを用いて、甲状腺機能が安定したあとに手術を行う

悪性のリスク
 腫瘍の卵巣外浸潤
 4cm以上の大きな病変
 BRAF変異陽性

術後の補助療法としてチラーヂンでTSHを正常下限(0.1~0.5 mU/L)にする。  
サイログロブリンを年1回フォローする。

〈参考文献〉
Ang LP. Struma Ovarii With Hyperthyroidism. Clin Nucl Med. 2017;42:475-477. PMID: 28394842.
Up to date “Struma ovarii”

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。