・腎生検された患者では尿細管間質性腎炎の合併が最も多い。次いでクリオグロブリン血症に伴う膜性増殖性糸球体腎炎の報告が多い。
・遠位尿細管性アシドーシスや後天性Gitelman症候群などにより電解質異常を伴うことがある。
・Fanconi症候群によって低P血症・骨軟化症を起こしうる。
蛋白尿の精査中に原発性シェーグレン症候群(primary Sjögren syndrome, pSS)の診断がついた方がいたので、原発性シェーグレン症候群と腎疾患の関連について勉強。
腎機能は保たれており蓄尿では蛋白尿がそこまで多くなかったため、腎生検は施行しなかった。頻度と所見からTINが最も疑わしいと考えられた。
合併する腎疾患とその頻度
pSSに腎疾患が合併する頻度は10%以下と比較的稀である。
尿細管性間質性腎炎(tubulointerstitial nephritis, TIN)が最も多く、次にクリオグロブリン血症に伴う膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis, MPGN)が2番目に多い。
病理
急性尿細管間質性腎炎(TIN)
pSSに合併する腎病変で腎生検された患者の1/3~2/3を占める。
基本的に無症候性であり、軽度の蛋白尿や腎機能障害を伴うのみである。
TINの合併はpSS患者の生命予後に影響しないと考えられる。
TINの診断は困難なため、必要時は腎生検を行う必要がある。
重度のTINの場合はステロイド投与が治療となる。
遠位尿細管性アシドーシス(dRTA)
pSSにおいて電解質異常を起こす原因として最多。
低K血症が唯一の所見となることがある。また高Ca尿症や低シトルリン尿症に伴う腎結石・腎石灰化症で見つかることもある。完全dRTAでは代謝性アシドーシス、早朝の尿pH<5.5、尿中アニオンギャップ陽性となる。一方で不完全dRTAでは血中HCO3-は正常で、塩化アンモニウム負荷後に尿中pHが5.3未満にならない。よって不完全dRTAは塩化アンモニウム負荷をしないと診断されない。pSSにおける不完全dRTAは最も少ないイタリアの報告で5%であり、中国の報告では最大70%、米国の報告では33%とされている。
近位尿細管性アシドーシス・Fanconi症候群
dRTAと比べて稀であり、pSS患者の3-4%程度に認めるとされる。
アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシス、低P血症、低尿酸血症はdRTAより近位尿細管障害を示唆する。正常血糖尿糖も近位尿細管アシドーシスの指標として使用できる。近位尿細管性アシドーシスは無症状のことも多いが、骨軟化症や骨折をきたすことがある。
尿濃縮障害・腎性尿崩症
夜間尿・頻尿・尿崩症などは以前からpSS患者において報告されてきたが、その頻度は実際は少ない。
後天性Gitelman症候群・Bartter症候群
後天性Gitelman症候群はpSS患者のTINにおいて報告されている。腎性低K血症・低Mg血症・二次性高アルドステロン血症(血管内脱水に伴うレニン・アルドステロンの上昇)、低Ca尿症を呈する。
後天性Bartter症候群はGitelman症候群より稀ではあるが、報告されている。
膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
pSSに合併する腎病変で腎生検された患者の5-30%を占める。
高血圧、蛋白尿、血尿、ネフローゼ症候群、急性腎機能障害、急速進行性糸球体腎炎などが生じる。MPGNの合併はTINの合併より予後が悪い。治療はグルココルチコイド、免疫抑制薬、血漿交換などが行われる。免疫沈着物は、免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、κ鎖、λ鎖)と補体分画(C3、C1q)で構成されており、補体媒介性MPGNのようにC3のみであることはない。
膜性腎症(MM)
pSSは古典的に膜性腎症の二次性の原因として記述されてきたが報告数は多くない。
pSSに合併する腎病変で腎生検された患者の10%以下である。
ループス腎炎と膜性腎症の関連は明らかだが、pSSと膜性腎症の関連ははっきりしていない。
・腎生検された患者では尿細管間質性腎炎の合併が最も多い。次いでクリオグロブリン血症に伴う膜性増殖性糸球体腎炎の報告が多い。
・遠位尿細管性アシドーシスや後天性Gitelman症候群などにより電解質異常を伴うことがある。
・Fanconi症候群によって低P血症・骨軟化症を起こしうる。
【参考文献】
Renal involvement in primary Sjögren syndrome. Nat Rev Nephrol. 2016;12:82-93. PMID: 26568188.
Up to Date:Kidney disease in primary Sjögren syndrome(topic last updated: Jan 12, 2023.)