・抗サイトカイン中和抗体によって免疫不全・感染症や自己抗体疾患が生じるうる
・抗GM-CSF抗体は肺胞蛋白症以外に播種性ノカルジア症やC. gattii感染症
・抗IFN-γ抗体は播種性NTM症
・胸腺腫患者の日和見感染症では抗IL-23中和自己抗体
・CRP値が上がらない黄色ブドウ球菌感染症では抗IL-6中和自己抗体
・最重症COVID-19では1型IFN中和自己抗体
はじめに
最近抗サイトカイン自己抗体に伴う様々な報告が出ているので、簡潔ですがまとめました。
抗GM-CSF抗体
抗GM-CSF抗体は自己免疫性肺胞蛋白症患者のほぼ全例に認められる。
GM-CSF中和抗体は肺胞蛋白症以外にも肺や中枢神経のノカルジア症やクリプトコッカス感染症(特にC. gattii)、重度の侵襲性アスペルギルス症患者でも認められる。
これらの患者では肺胞蛋白症が同時に起こることがあれば、日和見感染症の数年後に発症することもある。
抗IFNγ中和自己抗体と播種性NTM症
IL-23中和自己抗体
IL-12とIL-23は骨髄細胞から産生される重要なサイトカインでヘルパーT細胞を刺激して、インターフェロンγやIL-17、IL-22などの免疫活性化サイトカインを分泌させる。IL-12とIL-23はp40サブユニットとIL-12Rβ1受容体サブユニットを共有するヘテロ二量体サイトカインである。両方ともナイーブリンパ球とメモリーT細胞からのIFN-γ産生を亢進させるが、IL-23はIL-17産生を亢進させる点でIL-12とは異なる。
抗IL-12抗体を持っている胸腺腫患者の一部で日和見感染症を引き起こすことが知られていたが、明らかな因果関係ははっきりしていなかった。しかし後に抗IL-12抗体を持っている患者の中に抗IL-23中和自己抗体も持っている患者がいることが判明し、IL-23中和自己抗体と日和見感染症との間に関連が判明した。
細菌、アスペルギルス・ニューモシスチス・コクシジオイデスなどの環境真菌、環境抗酸菌による播種性感染症、肺や中枢神経感染症を起こした胸腺腫患者の83%にIL-23中和自己抗体が認められた。
→胸腺腫患者における日和見感染症は抗IL-23中和自己抗体の存在を疑う。
IL-17, IL-22中和自己抗体
慢性皮膚カンジダ症と関連がある。上皮バリアとカンジダに対して必須のサイトカイン。IL-17は抗菌ペプチドの産生を誘発し、IL-22は上皮細胞の増生と修復を起こす。
自己免疫性多内分泌腺症候群(APS)1型の患者や胸腺腫を持つ患者に認められる。
抗IL-6自己抗体
デンマークの研究において健常者の20%に抗IL-6抗体を認めたが、中和自己抗体は0.1%であった。IL−6中和自己抗体による感染症は4例(11ヶ月〜63歳)報告されており、再発性の黄色ブドウ球菌皮下膿瘍が2例、大腸菌と連鎖球菌膿胸1例、重度の敗血症性ショックが1例。
抗IL-6中和抗体によってCRP値が上昇しない。
1型IFN中和抗体とCOVID-19
1型IFN、特にIFN2αとIFNω中和自己抗体をもつ患者ではCOVID-19が重篤化しやすい。
重症COVID-19患者の少なくとも10%に抗IFN2α抗体や抗IFNω抗体を認める。
加齢とともに抗体陽性率は上がり、70歳以下だと0.17%だが、80-85歳だと4.2%と高い。
男性のほうが陽性率が高い。80歳以上の重症COVID-19の20%で陽性だった。
本邦でも検討がなされ、COVID-19最重症例の10.6%に検出され、中等度以下では1%以下であった。陽性例は全員50歳以上で、男性が92.3%であった。
Autoantibodies neutralizing type I IFNs are present in ~4% of uninfected individuals over 70 years old and account for ~20% of COVID-19 deaths. Sci. Immunol. 6, eabl4340 (2021).
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20220629-1/
Neutralizing Type I Interferon Autoantibodies in Japanese Patients with Severe COVID-19. J Clin Immunol. 2022 Oct;42(7):1360-1370.
IL-10中和自己抗体と炎症性腸疾患
IL-10は抗炎症性サイトカインとして重要なサイトカインである。
IL-10の欠失や受容体の異常患者では重度の小児炎症性腸疾患が生じることが知られている。
他にも毛嚢炎、関節炎、B細胞リンパ腫などを合併することがある。
今回IL-10中和自己抗体による炎症性腸疾患を生じた小児例2例が報告がされた。
まとめ図
・抗サイトカイン中和抗体によって免疫不全・感染症や自己抗体疾患が生じるうる
・抗GM-CSF抗体は肺胞蛋白症以外に播種性ノカルジア症やC. gattii感染症
・抗IFN-γ抗体は播種性NTM症
・胸腺腫患者の日和見感染症では抗IL-23中和自己抗体
・CRP値が上がらない黄色ブドウ球菌感染症では抗IL-6中和自己抗体
・最重症COVID-19では1型IFN中和自己抗体
〈参考文献〉
Anti-cytokine autoantibodies: mechanistic insights and disease associations. Nat Rev Immunol 2024;24:161-77.
Anticytokine autoantibodies: Autoimmunity trespassing on antimicrobial immunity. J Allergy Clin Immunol. 2022;149:24-28.