帯状疱疹の神経障害には
血管障害、脊髄症、帯状疱疹後神経痛、網膜壊死、小脳炎があります。
帯状疱疹後神経痛以外は皮疹がなくても発症することがあるので要注意。
〈概念〉
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の血管障害では脳梗塞、脊髄梗塞、動脈瘤、くも膜下出血、脳出血、頸動脈解離、稀にPADも起こす。
巨細胞性動脈炎との関連の報告もあります。
大・小血管を単独よりは同時に侵すことが多い。大血管単独は稀。
CSFの細胞数増加と皮疹は1/3程度の患者で認められないことがあるので注意。
脳内のVZV血管障害はどの年齢でも起こり、初感染(水痘)や再活性化(帯状疱疹)でもみられる。
子供の動脈性脳梗塞の31%はVZVによるものだと推定されている。
巨細胞性大動脈炎は基本高齢者にしか起こらない。
病理では
肉芽腫性血管炎を起こし、血管壁の損傷・貫壁性炎症がみられる。
多核化巨細胞や類上皮細胞もみられる。
脳梗塞のリスクは
眼周囲の帯状疱疹、帯状疱疹発症3ヶ月以内 *発症後1年はリスク上がる
*抗ウイルス剤使用で脳梗塞のリスクは減る。
皮疹と脳梗塞が同時に起こることがあるが、
皮疹出現から神経症状出現までは平均4.1ヶ月。
〈想起〉
帯状疱疹の既往が数ヶ月以内にある患者のTIA・脳梗塞
皮髄境界の脳梗塞
髄液検査で単球優位の細胞数増加
上記のような場合ではVZVによる血管障害を想起します。
疑った場合はIgG抗体とPCRを提出して、結果が出る前にアシクロビル投与を開始します。
〈検査〉
髄液検査
単球優位の細胞数増加、赤血球も上がることが多い
蛋白は軽度上昇、糖は正常
髄液中のIgG抗体(93%)のほうが髄液DNA(30%)より感度高い
両方とも陰性の場合はVZV血管障害は否定できる
MRI
ほとんどの症例で異常がみられる。皮質・白質病変いずれも起こりうるが、境界部が特徴的。
脳梗塞が多いが、出血なども起こりうる。
血管造影・MRA
一部の狭窄とその後の拡張がみられることが多い。
〈治療〉
アシクロビル10mg/kg 1日3回 14日間
プレドニゾロン1mg/kg 5日間飲みきり
〈参考文献〉
Gilden D. Varicella zoster virus vasculopathies: diverse clinical manifestations, laboratory features, pathogenesis, and treatment. Lancet Neurol. 2009;8:731-40. PMID: 19608099.
Nagel MA. The varicella zoster virus vasculopathies: clinical, CSF, imaging, and virologic features. Neurology. 2008;70:853-60. PMID: 18332343.
Nagel MA. Varicella Zoster Virus Vasculopathy. J Infect Dis. 2018 ;218:S107-S112. PMID: 30247600.