更新:2022/8/23
5日間以上続く髄膜炎症状+リンパ球優位の細胞数増加で疑う。
水頭症, 脳底部の高信号は結核性髄膜炎を強く示唆する。
結核性髄膜炎は疑ったら, 細菌性髄膜炎と同様に早期に治療を開始する。
はじめに
結核の中枢神経病変には髄膜炎、脳結核腫、脊髄くも膜炎がある.
全結核の1%、肺外結核の4%程度を占める.
リスク
低栄養、アルコール依存、悪性腫瘍、免疫抑制薬、HIV、最近の麻疹感染、小児期の麻疹感染
症状
発熱20-70% 頭痛25-70% 嘔気・嘔吐30-70%
意識障害59% 人格変化28% 昏睡21%
脳神経麻痺 20-35%
視神経・外転神経・顔面神経が侵されることが多い
普通の細菌性髄膜炎ではリステリアや脳膿瘍がない限りみられない
片麻痺5-30%
亜急性の経過
Ⅰ週間以内7%、1-3週間57%、3週間以上36%
病期
初期(1-3週程度): 緩徐発症の倦怠感、頭痛、発熱、人格変化
髄膜炎期: 頭痛、嘔気・嘔吐、意識障害、脳神経麻痺・錐体路障害
麻痺期(病勢が急に早くなる): 混迷・昏睡、痙攣、片麻痺
Stage Ⅰ:意識清明, 局所神経症状なし
Stage Ⅱ:不注意, 混乱, 無気力, 軽度の脳神経麻痺や片麻痺, GCS11-15
Stage Ⅲ:せん妄, 混迷, 昏睡, 痙攣, 複数の脳神経麻痺, 完成した片麻痺, GCS≦10
検査
髄液検査
他の中枢神経感染症と比べて結核では、リンパ球数増加は軽度(ウイルス性や真菌性と似ている)だが、蛋白の上昇が目立つ。
リンパ球優位の細胞数増加(初期は好中球優位となりうる)
100−500/mm3程度。100以下は15%、500-1500は20%
糖低下 45mg/dL以下が80%
蛋白上昇 だいたい100-500mg/dL 100以下が25%、500以上が10%
髄液の抗酸菌染色、培養、PCRは感度高くない
髄液培養(感度40〜80%)
抗酸菌グラム染色(感度20〜40%)
PCR 感度56% 特異度98%
Xpert MTB/RIF 感度80.5% 特異度97.8%
ADA
カットオフ1~4U/L 感度>93% 特異度<80%
8〜10U/L 感度44〜48% 特異度75〜100%
髄液検査は疑ったら少なくとも3回は行う! 10mLは提出する。
1回の髄液検査ではZiehl-Neelsen染色と抗酸菌培養の感度は37%、52%だが、3回髄液検査を行うとそれぞれの感度は87%、83%まで上昇する。
抗酸菌培養が陽性になるまで2-4週間かかるので、結核性髄膜炎を疑った場合は治療を開始する。
頭部CT
水頭症75%、脳底部髄膜の高信号38%、皮質の梗塞15-30%、結核腫5-10%
頭部MRI
脳底部髄膜の高信号と水頭症は結核性髄膜炎を強く示唆する
強い脳底部の高信号は基底核の脳梗塞のリスクとなる
テント上の脳実質と脳幹部の脳梗塞がみられることがある。
想起
5日間以上の髄膜炎症状と細胞数1000以下でリンパ球優位の髄液所見
脳底部髄膜の高信号や水頭症
鑑別疾患
真菌性髄膜炎(クリプトコッカス,ヒストプラズマ,ブラストミセス,コクシジオイデス)
神経ブルセラ症
神経梅毒
神経ボレリア(ライム病)
局所の傍髄膜感染(蝶形骨洞副鼻腔炎,感染性心内膜炎,脳膿瘍)
トキソプラズマ脳症
細菌性髄膜炎のpartial treatment
癌性髄膜炎(リンパ腫,上皮性悪性腫瘍)
治療
リファンピシン,イソニアジド,ピラジナミド,エタンブトール 2か月投与
その後リファンピシンとイソニアジド2剤を7-10か月投与
Total9-12か月間の投与を行う
デキサメタゾン
成人では12mg/dayを3週間投与し,2-4週間かけて漸減する.
メタアナリシスでは31vs 41%、RR 0.75(95% CI 0.65-0.87)で死亡率を減少させる.
HIV患者に対する抗ウイルス療法はIRISのリスクがあるので治療開始2か月後に行う.
合併症
水頭症 ~80%
髄液中の蛋白質が500mg/dL以上になると、髄液の流れが閉塞しうる。
脳底部で閉塞が起きやすい。
低Na血症 45%
失明15% 視交叉くも膜炎 によって生じる
脳梗塞15-60% 血管炎が生じるため
結核腫10%
結核腫がある患者の1/3が多発病変。周囲の浮腫・リングエンハンスメントを伴うことが多い。成人ではテント上に発生することが多い。結核腫の患者の髄液検査は正常であることが多い。一方でツベルクリン反応は最大85%陽性、胸部レントゲンは30-80%で異常を呈する。
予後
治療しても15-40%の高い致死率
発症早期では10%程度の死亡率だが,進行すると致死的.
細菌性髄膜炎と同様に疑ったら1日でも早く治療を開始することが重要.
つまり培養などの検査結果が分かる前に治療を開始する必要がある.
5日間以上続く髄膜炎症状+リンパ球優位の細胞数増加で疑う。
水頭症, 脳底部の高信号は結核性髄膜炎を強く示唆する。
結核性髄膜炎は疑ったら, 細菌性髄膜炎と同様に早期に治療を開始する。
参考文献
Up to date: Tuberculous meningitis: Clinical manifestations and diagnosis
Central Nervous System Tuberculosis. Microbiol Spectr. 2017;5. PMID: 28281443.
Case 1-2021: A 76-Year-Old Woman with Lethargy and Altered Mental Status N Engl J Med 2021;384:166-176.
Tuberculosis of the Central Nervous System. Continuum (Minneap Minn). 2018;24:1422-1438. PMID: 30273246.