・重症低Na血症の補正速度の制限についてのエビデンスレベルは低い。
・近年は補正速度が早いほうが死亡率が低いことが報告されており、今回のメタアナリシスでも補正速度が早い群の方が院内死亡率、30日死亡率ともに低いことが示された。ODSに関しても明らかな差はなかった。
・ODSは発症率が低いため、さらなるビックデータでの報告が求められるが、死亡率低下が明らかになってくれば、今後の治療方針が変わってくる可能性がある。
文献
背景
重症の低Na血症に対する安全かつ適切な補正速度はRCTもなくわかっていない。
米国と欧州のガイドラインでは浸透圧性脱髄症候群(ODS)を防ぐために補正速度を制限している。これらの推奨はエビデンスレベルの低い報告と専門家の意見に基づいている。
そこで今回、重症の低Na血症に対する補正速度と死亡率についてシステマティック・レビューとメタアナリシスがなされた。
方法
対象は血清Na値<120mEq/L未満もしくは125mEq/L未満かつ重度の症状(cardiorespiratory distress、seizures、GCS≤8、意識障害)ありの患者。
補正速度はvery rapid (12mEq/L/日以上)、rapid (8-10mEq/L/日以上)、slow (8未満または6-10mEq/L/日未満)、very slow (4-6mEq/L/日未満)に分けられた。
主要評価項目は院内死亡と30日死亡。
結果
16のコホート研究の11811人、平均68.2歳、女性56.7%。
rapid群はslow群、very slow群と比べて院内死亡を1000人あたり、それぞれ32人(OR0.67, 95%CI, 0.55-0.82)、221人 (OR0.29; 95%CI 0.11-0.79)減らした。
30日死亡率はそれぞれ61人(OR0.55, 95%CI, 0.45-0.67)、134人(OR0.35, 95%CI, 0.28-0.44)減らした。
ODSの発症率に有意差はなかった。
ODSはvery rapid群594例中2例(0.3%)、rapid群3842例中18例(0.5%)、slow群5652例中10例(0.2%)、very slow群2466例中1例(<0.1%)で発生した。リスク差に有意差はなかった。
・重症低Na血症の補正速度の制限についてのエビデンスレベルは低い。
・近年は補正速度が早いほうが死亡率が低いことが報告されており、今回のメタアナリシスでも補正速度が早い群の方が院内死亡率、30日死亡率ともに低いことが示された。ODSに関しても明らかな差はなかった。
・ODSは発症率が低いため、さらなるビックデータでの報告が求められるが、死亡率低下が明らかになってくれば、今後の治療方針が変わってくる可能性がある。