感染症

慢性髄膜炎

慢性髄膜炎は4週間以上の経過を呈する髄膜炎。
最近、免疫抑制剤使用患者の髄膜炎疑いの症例をよく経験するので慢性髄膜炎の勉強。

鑑別疾患

原因として比較的多いものは、結核性髄膜炎クリプトコッカス髄膜炎神経梅毒癌性髄膜炎神経サルコイドーシス(サルコイドーシスの5~15%に発症)、神経ベーチェット病(ベーチェット病の10%に発症)。最大1/3の患者は診断がつかない

細菌

結核、リステリア、梅毒、レプトスピラ、ノカルジア、放線菌、ブルセラ、ウィップル病、ライム病、緑膿菌

真菌

クリプトコッカス、カンジダ、アスペルギルス、ムコール、ヒストプラズマ、コクシジオイデス、ブラストミセス

ウイルス

HIV、HSV-2、エンテロウイルス、HSV-1、CMV、ムンプス、JCウイルス、EBV、HHV-6、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス

寄生虫

トキソプラズマ、糞線虫

自己免疫性疾患

神経サルコイドーシス、神経ベーチェット、Vogt-小柳−原田病、GPA、RA、SjS、SLE、成人スティル病、中枢神経限局性血管炎、IgG4関連疾患、特発性肥厚性硬膜炎

悪性腫瘍

がん性髄膜炎、悪性リンパ腫

化学性

NSAIDs(主にイブプロフェン)、IVIG、抗菌薬(ST合剤)、免疫抑制薬、抗がん剤、抗けいれん薬(ラモトリギン、カルバマゼピン)

検査

慢性髄膜炎を疑ったすべての症例に行うべき

複数回の髄液検査(もし陰性であるなら最大3回まで真菌・抗酸菌培養を提出、細胞診は最大2回まで)、髄液クリプトコッカス抗原、髄液細菌培養、髄液の細胞数・蛋白・糖、造影頭部MRI、血清の梅毒・HIV・(ライム病)抗体検査、胸部CT(リンパ節腫脹、肉芽腫、悪性腫瘍の検索)、T-SPOT・QFT、(髄液中の梅毒・ヒストプラズマ・ブラストミセス・コクシジオイデスの抗体)

必要に応じて追加提出するもの

髄液β-Dグルカン、髄液アスペルギルス抗原、髄液エンテロウイルスPCR、血清抗核抗体・ANCA・抗CCP抗体、髄液結核PCR、髄液ウィップル病PCR、髄液ライム病抗体、眼科診察(ぶどう膜炎検索)、PET-CT、髄膜・硬膜・脳生検(画像所見に応じて)、血清のトキソプラズマ・ブルセラ・レプトスピラ抗体、髄液中のスポロトリコーシス抗体、髄液ヒストプラズマ・ブラストミセス抗原

慢性髄膜炎患者の診断アプローチ

免疫不全なし

梅毒、クリプトコッカス、(ヒストプラズマ、コクシジオイデス、ブラストミセス)、HIV、VZV、悪性腫瘍、サルコイドーシス、SLE、ベーチェット病

好中球減少

黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、大腸菌、アスペルギルス、カンジダ、ムコール、CMV、HSV、HHV-6,7、アデノウイルス、(ウェストナイル熱)

B細胞機能不全・免疫グロブリン低値

肺炎球菌、クレブシエラ、インフルエンザ桿菌、緑膿菌、真菌、麻疹、エンテロウイルス

T細胞機能不全

リステリア、ノカルジア、梅毒、クリプトコッカス、ムコール、アスペルギルス、(ヒストプラズマ、コクシジオイデス、ブラストミセス)、HIV、CMV、HSV、VZV、JCウイルス、EBV、HHV-6,7、アデノウイルス、トキソプラズマ、糞線虫、悪性腫瘍

白質病変

CMV、EBV、VZV、JCウイルス

脳梗塞・血管病変

アスペルギルス、クリプトコッカス、ムコール、VZV

Mass病変

ノカルジア、結核、クリプトコッカス、トキソプラズマ、悪性リンパ腫

脳幹病変

リステリア、VZV、JCウイルス、ウェストナイル熱

両側頭葉病変

ヘルペスウイルス、傍腫瘍症候群

臨床上のヒント

ツベルクリン反応陽性・T-SPOT陽性→結核
南西部アメリカ・メキシコへの旅行→コクシジオイデス
視床下部・視交叉・下垂体病変→サルコイドーシス
ぶどう膜炎→サルコイドーシス、ベーチェット病、Vogt-小柳−原田病
神経根症・脳神経麻痺→ライム病
メキシコ、中央・南アメリカ、インド、サハラ砂漠以南アフリカ、カリブ海への旅行→嚢虫症
未殺菌の牛乳の摂取、牛・羊・豚・ヤギとの接触→ブルセラ
末梢顔面神経麻痺→サルコイドーシス
中枢性尿崩症→サルコイドーシス
白毛症→Vogt-小柳−原田病
繰り返す陰部潰瘍や口内炎→ベーチェット病
好中球優位の髄液所見→ノカルジア、アクチノマイセス、ブルセラ、結核、カンジダ、アスペルギルス、SLE、化学性
好酸球優位の髄液所見→コクシジオイデス、悪性リンパ腫、糞線虫、嚢虫症、住血吸虫症
低ガンマグロブリン血症→エンテロウイルス

〈参考文献〉
Chronic Meningitis. Continuum (Minneap Minn). 2018;24:1298-1326. PMID: 30273241.
Chronic Meningitis. N Engl J Med. 2021;385:930-936. PMID: 34469648.
Up To Date: Approach to the patient with chronic meningitis(2022/8/23)

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。