妊娠関連下垂体炎は妊娠後期から分娩後1ヶ月以内に好発する。
非妊娠関連下垂体炎と比較して視交叉症候群、副腎不全が多い。下垂体茎の肥厚や尿崩症は少ない。
治療は副腎不全に対する生理量グルココルチコイド投与など保存的加療が主体となる。激しい頭痛や視交叉症候群に対しては高用量グルココルチコイド・手術加療を考慮する。
148例の妊娠・分娩が関連した下垂体炎のレビューが出たので勉強。
2022年4月30日までに報告された妊娠中もしくは分娩後1年以内に発症した下垂体炎が対象。
発症時期
妊娠中の発症が56.5%(83/148)、分娩後の発症が43.5%(64/148)。
妊娠中の発症時期に関しては第3三半期に約2/3の症例が発症している。
第1三半期(妊娠0週0日〜13週6日):9.4%
第2三半期(妊娠14週0日〜27週6日):21.9%
第3三半期(妊娠28週0日以降):68.7%
妊娠中の発症は分娩前の3ヶ月以内(妊娠後期)が多い。
分娩後の発症は1ヶ月以内の発症が圧倒的に多い。
11例は出産後1週間以内に発症していた。
症状・所見
妊娠関連下垂体炎は非妊娠関連下垂体炎と比較して、視交叉症候群が50%と多く、画像所見はトルコ鞍病変がほとんどで、鞍上部病変や下垂体茎肥厚は少ない。内分泌障害は副腎不全が多く、尿崩症は少ない。68%の症例が授乳困難であった。
AB:下垂体炎発症時。下垂体は対称性に肥大し、均一に強く造影される。この症例では下垂体茎肥厚もある。CD:保存的加療から10ヶ月後のMRIでは改善を認めている。
妊娠・出産の経過
下垂体炎以外に妊娠経過に問題があった症例は1例のみであった。
少数の症例を除いて出産も問題なかった。後遺症を残るような合併症はなかった。
治療
治療に関しては当初は手術が多かったが、近年は保存的加療が主流。
手術は術後の下垂体前葉機能低下症や尿崩症が増える傾向がある。
激しい頭痛や視交叉症候群に対しては近年、高用量グルココルチコイド投与が主流であるが、漸減に伴う再発が手術・保存加療症例より多いので注意。
保存的加療でもほぼ全例、頭痛や視野障害は改善するが、下垂体機能低下症は変わらない。
副腎不全の速やかな診断と生理量のグルココルチコイド補充が母体死を防ぐために重要。
妊娠関連下垂体炎は妊娠後期から分娩後1ヶ月以内に好発する。
非妊娠関連下垂体炎と比較して視交叉症候群、副腎不全が多い。下垂体茎肥厚、尿崩症は少ない。
治療は副腎不全に対する生理量グルココルチコイド投与など保存的加療が主体であり、激しい頭痛や視交叉症候群に対しては高用量グルココルチコイド・手術加療を考慮する。
【参考文献】
Pregnancy-related hypophysitis revisited. Eur J Endocrinol. 2023;188:lvad003. PMID: 36655394.