- 発熱・股関節痛・歩行困難を訴えた患者では腸腰筋膿瘍を疑う
- 血流感染(特に感染性心内膜炎)や腸管・尿路からの二次性感染を疑う
- 起因菌は黄色ブドウ球菌が最多
〈概念〉
腸腰筋は大腰筋、小腰筋、腸骨筋からなる筋群の総称で股関節の主要な屈筋。
Th12~L5の側面から鼠径靭帯の下を通って大腿骨小転子に付着している。
〈原因〉
腸腰筋は血流が豊富であり、感染性心内膜炎やカテーテルを介した血流感染から発症する。
またS状結腸、虫垂、空腸、尿管、腹部大動脈、腎臓、膵臓、脊椎、腸骨リンパ節などに近接しているため、こうした臓器からの2次的な炎症の波及によっても発症する。
一次性
血流やリンパからの感染。アジアではこっちが多い。
リスクは糖尿病、IV drug user、HIV、腎不全、免疫不全など。外傷や血腫が誘引となることがある。
二次性
腸管(クローン病、潰瘍性大腸炎、虫垂炎、憩室炎、大腸癌)
尿路(尿路感染症、腎膿瘍)
筋骨格系(骨髄炎、化膿性仙腸関節炎、化膿性関節炎、外傷)
血管(感染性腹部大動脈瘤)
〈起因菌〉
黄色ブドウ球菌が一番多い。
次いでレンサ球菌、大腸菌(尿路・消化管からが多い)。
結核が起こすこともあるので注意。
〈症状〉
発熱、腰痛、腹痛(境界のはっきりしない腹痛)
側腹部痛
歩行障害
股関節や大腿部に放散する痛み(L2,3,4の神経痛)
〈身体診察〉
腸腰筋肢位(psoas position)
股関節を屈曲して膝を立てた状態
この姿勢が疼痛が楽であるため患者はこの姿勢になる。
Psoasサイン
Obturatorサイン
〈検査〉
血液検査で炎症反応上昇
血液培養 41-68%で陽性になるとされる
CTが診断において有用。
〈鑑別疾患〉
腸腰筋血腫
後腹膜の虫垂炎
腸腰筋滑液包炎
化膿性股関節炎
悪性腫瘍転移
〈治療〉
ドレナージ+抗菌薬
抗菌薬の投与期間ははっきりしたものはないが3-6週間
30mm以下の膿瘍はドレナージなしでも治療可能とされるがはっきりしたデータはない
〈合併症〉
DVT 大腿静脈の圧迫によって起こる
水腎症 尿管の圧迫によって起こる
麻痺性イレウス
- 発熱・股関節痛・歩行困難を訴えた患者では腸腰筋膿瘍を疑う
- 血流感染(特に感染性心内膜炎)や腸管・尿路からの二次性感染を疑う
- 起因菌は黄色ブドウ球菌が最多
〈参考文献〉
Shields D. Iliopsoas abscess–a review and update on the literature. Int J Surg. 2012;10(9):466-9. PMID: 22960467.
Mallick IH. Iliopsoas abscesses. Postgrad Med J. 2004 Aug;80(946):459-62. PMID: 15299155.
Up to date “Psoas abscess”