①褐色細胞腫・パラガングリオーマには主にドパミンを産生する稀なパターンがある
②カテコラミン過剰症状がなく、無症候性・非典型的な症状がメイン
③メタネフリンのみの測定だと見逃すことがある
④悪性例が多いことに注意
〈概念〉
褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGLs)は主に産生するホルモンによって
①アドレナリン産生型、②ノルアドレナリン産生型、③ドパミン産生型(稀)、④非産生型(極めて稀)に分けられる。
基本的に①→④に向かうほど未分化で悪性度が高くなる。
ドーパミン産生型は稀である。
メタネフリンのみ測定すると見逃されることがありドパミンとその代謝産物である3-MT(メトキシチラミン)の測定が重要。
ドーパミン産生型は副腎外が多く、頸動脈小体など頭頸部パラガングリオーマ(Head & Neck PGL:HNPGL)が多い。また悪性が多いことにも注意が必要。
ドパミン産生型の悪性の割合は66-90%とされ、アドレナリン・ノルアドレナリン型の21-29%と比べて高い。
アドレナリン・ノルアドレナリン産生型のようなカテコラミン過剰症状が起きにくいため、無症候性や非典型的な症状(慢性下痢、嘔気嘔吐、低血圧、体重減少、占拠性病変による症状:腹部だと疼痛、頭頸部だと難聴や耳鳴り)が多い。
D1レセプターが刺激されると血管平滑筋では血管拡張が起きる。消化管では下痢が起きる。
嘔気や嘔吐はCNSのD2レセプターが刺激されるかもしれない。
交感神経節のシナプス前膜のD2受容体を刺激してノルアドレナリンの放出を抑制するので、余計カテコラミン過剰症状が出にくくなる。術後はこれが解除されるので、術後高血圧になることがある。
アドレナリン・ノルアドレナリン産生型と異なりαブロッカーは重度の低血圧や循環動態の破綻を起こすことがある。そのため術前にルーチンでαブロッカーは用いないことが多い。
周術期はCCBが推奨されているが、エビデンスはあまりない。
ドパミン産生型の遺伝子変異はコハク酸脱水素酵素(succinate dehydrogenase:SDH)であるSDHB、SDHDの変異が多い。
①褐色細胞腫・パラガングリオーマには主にドパミンを産生する稀なパターンがある
②カテコラミン過剰症状がなく、無症候性・非典型的な症状がメイン
③メタネフリンのみの測定だと見逃すことがある
④悪性例が多いことに注意
〈参考文献〉
Gupta G. PRECISION MEDICINE: AN UPDATE ON GENOTYPE/BIOCHEMICAL PHENOTYPE RELATIONSHIPS IN PHEOCHROMOCYTOMA/PARAGANGLIOMA PATIENTS. Endocr Pract. 2017 Jun;23(6):690-704. PMID: 28332883.
Foo SH. Dopamine-secreting phaeochromocytomas and paragangliomas: clinical features and management. Singapore Med J. 2010 May;51(5):e89-93. PMID: 20593136.