原発性甲状腺機能低下症の約70%に下垂体腫大を認める。
下垂体MRIではドーム状の形状が特徴的。
非機能性下垂体腺腫やプロラクチノーマと誤診しないよう注意。
甲状腺ホルモン補充で85%程度の腫大は改善する。
生理的な下垂体腫大の原因として妊娠がよく知られている(プロラクチン産生細胞の腫大)。
原発性甲状腺機能低下症によっても下垂体腫大が生じるので注意が必要。
2002年4月から2004年8月にヨルダンの国立病院で原発性甲状腺機能低下症でTSH≧50μIU/mL以上の53人に対してMRIを施行。高さ9mm以上を下垂体腫大と定義して、腫大患者では甲状腺ホルモン補充後6,12ヶ月後にMRIフォローが行われた。
4名は下垂体腺腫と誤診され、手術の予定が組まれていた。
結果としてMRIで下垂体の腫大を70%(37/53)に認めた。そのうち84%(31/37)がTSH≧100μIU/mL。甲状腺ホルモン補充で85%の患者で腫大が改善した。
原発性甲状腺機能低下症においてTRHが上昇して、下垂体のTSH産生細胞が腫大することが原因として考えられる。
TRH上昇に伴いプロラクチンが増加し、乳汁漏出症・不妊症・月経不順が生じうる。
下垂体腫大と合わせてプロラクチノーマと誤診される可能性がある。
この研究では22%(11/49)の女性が月経不順、乳汁分泌、原発性不妊、下垂体肥大を呈していた。
甲状腺機能低下症に伴う低身長や乳汁分泌、月経不順の精査や頭痛に対してMRIを撮影した際に下垂体腫大を指摘される可能性がある。
左が治療前で右が治療後。ドーム状の下垂体の腫大が特徴的。
下垂体においてTSH産生細胞が中央にあることが左右対称性のドーム状の腫大の理由かもしれない。
原発性甲状腺機能低下症の約70%に下垂体腫大を認める。
下垂体MRIではドーム状の形状が特徴的。
非機能性下垂体腺腫やプロラクチノーマと誤診しないよう注意。
甲状腺ホルモン補充で85%程度の腫大は改善する。
〈参考文献〉
Khawaja NM. Pituitary enlargement in patients with primary hypothyroidism. Endocr Pract. 2006;12:29-34.PMID: 16524860.
Chakraborty S. Dome-Shaped Pituitary Enlargement in Primary Hypothyroidism: Avoiding Neurosurgical Interventions. J ASEAN Fed Endocr Soc. 2020;35:238-243. PMID: 33442197.
Shukla P. Pituitary Hyperplasia in Severe Primary Hypothyroidism: A Case Report and Review of the Literature. Case Rep Endocrinol. 2019:2012546. PMID: 31341683.