皮膚色素沈着+粘液腫+内分泌障害(PPNAD、先端巨大症、甲状腺腫瘍)を認めたらカーニー複合を考える。
心臓粘液腫が最も予後と関連する。
〈概念〉
CNC1は癌抑制遺伝子であるprotein kinase A regulatory subunit1α(PRKAR1A)遺伝子の不活化変異による常染色体優性遺伝の多発内分泌腫瘍。約70%が遺伝性で約30%が散発性。
CNC2の原因遺伝子はまだ判明していない。
平均診断年齢は20歳。
皮膚色素沈着+粘液腫(心臓、皮膚、乳房)+内分泌障害(PPNAD、先端巨大症、甲状腺腫瘍)が特徴。
内分泌症状として最も多いのが、原発性色素性結節性副腎皮質病変(PPNAD primary pigmented nodular aden-cortical disease)であり、ACTH非依存性クッシング症候群を呈する。
心臓粘液腫は脳塞栓症などにより死因の50%を占めるので、家族を含めた積極的な検索が必要。
心臓粘液腫の7%にCNCを認める。
皮膚色素沈着70-80%
点状皮膚色素沈着
青色母斑・類上皮性青色母斑(多発性)
ほくろが60-80%にみられる。眼瞼、口唇、耳、膣などに多い。幼少期に現れ、思春期に増える。歳を取ると消えることもある。
皮膚粘液腫20-50%
眼瞼、乳首、外耳道、膣にできやすい。
原発性色素性結節性副腎皮質病変 PPNAD 45-70%
カーニー複合患者に最も多い内分泌病変。平均診断年齢は34歳。
CNCの剖検患者ではほぼ100%にPPNADの所見を認める。CNCの所見の中では唯一性差があり、女性が70%。男性の平均診断年齢46歳と比べると女性は30歳と早い。
CTでは副腎は正常〜中等度に肥大。thin-slice CTでは10mm以下の小さい低信号結節がみえる。
PPNADでは周期性や非典型的なCushing症候群を呈することが多い。
高用量DEX後の2日目にUFCが増えるのがPPNADに特徴的。グルココルチコイド受容体の発現が関与しているかもしれない。
先端巨大症
約10%が症候性先端巨大症を呈する。30-40歳代に発症することが多い。巨人症の発症は1%以下と稀。
最大75%の患者で無症候性のGH、IGF-1やプロラクチンの上昇・OGTTでのGH抑制不十分・TRH試験で奇異性上昇などを認めるが、下垂体腫瘍を認めない。
甲状腺病変
嚢胞や結節性病変が75%にみられる。甲状腺腫瘍は10-25%にみられる。平均診断年齢は40-70歳。
濾胞腺腫が最も多い。2.5%に乳頭癌がみられる。
心臓粘液腫
30歳までに女性の35%、男性の45%に発症する。44%が再発する。
特発性では左房で高齢女性がほとんどだが、CNCではどの房室・年齢にも起こりうる。
予後を規定するためもっとも重要な病変で年1回の心エコーが推奨される。
治療は基本的に手術。
精巣病変 大細胞石灰型セルトリ細胞腫(large-cell calcifying Sertoli cell tumor:LCCSCT)
男性患者の35-60%に起きる。通常若年者に起こる。両側性、多発性の石灰化病変として進展し、正常の精巣組織を置き換えていく。悪性化リスクは低いので基本的に経過観察。不妊の原因となる。
乳房病変
良性乳房腫瘍が20-40%女性にみられる。
典型的な病変は乳房粘液腫、粘液性線維腺腫、乳管腺癌が多い。多くは両側性・多発性で思春期後に多い。
骨軟骨粘液腫
稀な良性の骨粘液腫病変でCNCの1-5%にみられる。典型的な2歳以下。長骨の骨幹部や副鼻腔に起きやすい。外科的切除。
砂腫状黒色神経鞘腫 PMS 5-10%
平均診断年齢は32歳。中枢神経・末梢神経のどこにでもできる。消化管、傍脊髄交感神経節、胸壁にできやすい。10%以下が悪性化し、肝臓・骨・脳に転移する。
膵腫瘍
2.5%の患者に認めて、死因になりうる。
各疾患の頻度の報告
〈予後〉
平均死亡年齢は50歳だが一部の人が早く亡くなるため。多くの人は一般人と変わらない。
死因は心臓粘液腫(塞栓症、心筋症、不整脈、周術期死亡)、PMSの転移・中枢神経浸潤、膵癌転移など。
皮膚色素沈着+粘液腫+内分泌障害(PPNAD、先端巨大症、甲状腺腫瘍)を認めたらカーニー複合を考える。
心臓粘液腫が最も予後と関連する。
〈参考文献〉
Up to date “Carney complex”
Bouys L. MANAGEMENT OF ENDOCRINE DISEASE: Carney complex: clinical and genetic update 20 years after the identification of the CNC1 (PRKAR1A) gene. Eur J Endocrinol. 2021;184:R99-R109. PMID: 33444222.
Correa R. Carney complex: an update. Eur J Endocrinol. 2015;173:M85-97. PMID: 26130139.
Cuny T. Acromegaly in Carney complex. Pituitary. 2019;22:456-466. PMID: 31264077.