治療可能な認知症の鑑別に脳アミロイドアンギオパチー関連炎症を加える。
頭部MRIの非対称性白質病変、皮質・皮質下の微小出血病変、髄軟膜の増強効果が特徴。
ステロイド投与に伴い改善が期待できるので、遅延なく検査・治療する。
NEJMのcase reportで勉強になったので、整理。
〈概念〉
脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloidangiopathy:CAA)を背景に、血管へ沈着したアミロイドβ蛋白(Aβ)の免疫原性により中枢神経に限局した血管炎から誘発された白質脳症・炎症。
2002年に行われたアルツハイマー病を対象としたβ-アミロイド42(Aβ42)を積極的に投与する臨床試験において、6%の患者に髄膜脳炎が発症したため中止となった。
2004年にEng JAらは生検で証明された脳アミロイドアンギオパシー(CAA)の症例を検討し、免疫抑制剤の投与に反応することが多い、主に白質の病変を有する患者を特定し、CAA関連炎症(CAA-ri)を提唱した。
〈症状〉
急性~亜急性に進行する認知機能障害が特徴で、痙攣・頭痛・限局的な神経症状を伴う。
症例報告では認知機能障害や痙攣が初期症状として報告されていることが多い。
〈検査〉
髄液検査
蛋白上昇をほとんどに認める。リンパ球優位の細胞数上昇を認めることもある。
頭部MRI
炎症性CAAのほとんどの症例は、頭部のMRIで顕著かつ特徴的な異常を示す。
T2強調画像・FLAIR
白質病変を伴うことが特徴。通常非対称に斑状もしくは融合性の高信号を認める。
時に一側大脳白質にmass effectを伴う広範な浮腫性病変を認めることがあり、脳腫瘍との鑑別を要することがある。
T2*強調画像・磁化率強調画像(SWI)
CAAの特徴である皮質・皮質下の多数の微小出血を認める。
ガドリニウム造影
髄軟膜に異常増強効果を認める。
CAA-Iの診断基準として上記が提唱されている。
確定診断には脳生検でアミロイドの沈着と血管・血管周囲の炎症所見の証明が必要となる。
〈鑑別疾患〉
各種の感染症
中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)を含めた腫瘍性病変
神経サルコイドーシス,acute disseminated encephalomyelitis(ADEM),progressive multifocal leukoencephalopathy(PML),posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)など
〈治療〉
第一選択:グルココルチコイド
再発性の場合はグルココルチコイド抵抗性の場合はシクロフォスファミドやMMFが使用される。
基本的にステロイドに反応するので、疑った場合は速やかな診断治療が必要となる。
典型例では脳生検なしで治療導入も推奨されるが、非典型例や脳腫瘍などとの鑑別のために脳生検が必要となる。
治療可能な認知症の鑑別に脳アミロイドアンギオパチー関連炎症を加える。
頭部MRIの非対称性白質病変、皮質・皮質下の微小出血病変、髄軟膜の増強効果が特徴。
ステロイド投与に伴い改善が期待できるので、遅延なく検査・治療する。
〈参考文献〉
Case 22-2021: A 64-Year-Old Woman with Cognitive Impairment, Headache, and Memory Loss. N Engl J Med 2021; 385:358-368.
Association Between Immunosuppressive Treatment and Outcomes of Cerebral Amyloid Angiopathy-Related Inflammation. JAMA Neurol. 2020;77:1261-1269.
多発性微小出血が認められ,脳生検により脳アミロイドアンギオパチー関連炎症と診断した1例. 日内会誌 106:820~827,2017
Subacute meningoencephalitis in a subset of patients with AD after Abeta42 immunization. Neurology. 2003;61:46-54. PMID: 12847155.
Clinical manifestations of cerebral amyloid angiopathy-related inflammation. Ann Neurol. 2004;55:250-6. PMID: 14755729.