内分泌

IgG4関連下垂体炎

疫学

IgG4関連疾患の1つにIgG4関連下垂体炎が存在する。
IgG4関連疾患の患者で下垂体炎を合併していたという報告は0~3.8%程度と稀である。
ただIgG4関連下垂体炎はリンパ球性下垂体炎と診断され見逃されている可能性がある。
神戸大学において170例の下垂体機能低下症患者を調べた研究では23名が下垂体炎、7名がIgG4関連下垂体炎と診断された。つまり下垂体機能低下症の7%、下垂体炎の30.4%がIgG4関連であった。

特徴

中高年男性に多い。
汎下垂体炎(前葉機能低下症と尿崩症)を呈することが多い。
MRIで下垂体腫大下垂体茎の肥厚を認める。
血清IgG4高値
IgG4関連疾患の他臓器病変の合併
ステロイド治療への反応がよい
*血清IgG4が上昇している下垂体炎の鑑別として悪性リンパ腫、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、サルコイドーシスなどが挙げられる。

MRI画像

診断基準

IgG4関連下垂体炎の診断基準は2011年にLeporatiらが提唱している。
①下垂体生検で著明なリンパ球、形質細胞浸潤。IgG4陽性細胞>10/HPF。
②下垂体MRIで下垂体腫大 and/or 下垂体茎の肥厚
③他臓器の組織でIgG4関連疾患の証明
④血清IgG4上昇(>140mg/dL)
⑤ステロイドへの反応(下垂体腫大の改善、症状の改善)

診断は①、②+③、②+④+⑤のいずれかを満たした場合

115名の症例報告まとめ

2021年に報告された115名のIgG4関連疾患のLiterature review。
男性72名、女性43名。
平均年齢56歳(14-87歳)。男性の方が平均年齢が明らかに高かった(男性62歳、女性38歳)。
前葉機能低下症は84%(86/102)に認め、性腺機能低下症が最多で、副腎皮質機能低下が2番目に多かった。
後葉機能低下症(中枢性尿崩症)は79%(70/89)に認めた。
MRIでは下垂体茎の肥厚を90名に認めた(2例は正常、23例は記載なし)。
T1強調画像での後葉高信号の消失は37例で記載があり、35例が消失していた。
血清IgG4の値は99名で報告あり。3名は高値、9名は正常、残りの87名においてIgG4の平均は666.2±936.4mg/dL中央値293、IQR 135-815)。
65%(75/115)が他臓器病変を合併。(1臓器35%、2臓器30%、3臓器20%、4臓器20%、5臓器10%、最大7臓器)
最多臓器は唾液腺で、次いで肺・膵臓・後腹膜の順に合併病変が多かった。

治療

治療に関してはデータが少なく、明確な推奨はない。
グルココルチコイドが第一選択で30-40mg/day程度使われることが多い。
下垂体腫大が改善後も低用量で継続することが推奨されている。
長期使用後に中止も検討できるが、再発は稀ではない。

〈参考文献〉
Pituitary and stalk lesions (infundibulo-hypophysitis) associated with immunoglobulin G4-related systemic disease: an emerging clinical entity. Endocr J. 2009;56:1033-41. PMID: 19926920.
The prevalence of IgG4-related hypophysitis in 170 consecutive patients with hypopituitarism and/or central diabetes insipidus and review of the literature. Eur J Endocrinol. 2013;170:161-72. PMID: 24165017.
IgG4-related hypophysitis. Endocrine. 2021;73:270-291. PMID: 33837927.

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総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。