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ピログルタミン酸(5-オキソプロリン)による代謝性アシドーシス

まとめ
 ・アセトアミノフェン(®カロナール)を定期内服している患者に原因不明のアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスをみたときに考えましょう

〈概念〉
アセトアミノフェンを長期内服している患者にストレスがかかると発症するAG開大性代謝性アシドーシスです.
低栄養で腎機能が悪くてアセトアミノフェンを長期内服している女性に多いとされます.
 慢性的なアセトアミノフェンの内服は血中グルタチオンを減らします.
 男女でγグルタミル経路の酵素活性が異なる.→女性が多い理由?
 低栄養状態は肝臓のグルタチオンの蓄えが減る. 
 感染・敗血症ではグルタチオン合成活性が減少する.
 腎機能が悪いと尿中へのピログルタミン酸の排出が減り血中濃度が上昇.

リスク 
 女性・低栄養・腎不全・慢性アルコール飲酒・敗血症

機序


 長期間のアセトアミノフェン内服はグルタチオンを減少させる.
低栄養状態や敗血症はグルタチオンが低下するためリスク.
 グルタチオンの減少によりγグルタミル-シスチン合成酵素のネガティブフィードバックが解けて、γグルタミルシスチンの合成が亢進する.
 γグルタミルシスチンから5-オキソプロリンが合成される.
 腎不全があると尿中に5-オキソプロリンが排出されないので血中濃度が上昇してアシドーシスを発症しやすい.

〈治療〉
支持療法
アセトアミノフェンの中止
Nアセチルシステインでグルタチオンを補充する 
 エビデンスは不十分ですがケースレポートレベルで使用されています.

以下MKSAPの問題
82歳の女性が,過去3日間で混乱が悪化しているため救急外来で評価された.既往歴は変形性関節症、高血圧、中等度のアルツハイマー病、冠動脈疾患. 食欲不振と経口摂取不良により,過去1年間で徐々に体重が減少している.常用薬はドネペジル,メトプロロール,クロルタリドン,ロスバスタチン,低用量アスピリン,アセトアミノフェン.
身体検査では、バイタルサインは正常で、酸素飽和度は95%室内気.BMIは18.患者は脱力感があり,時間と場所の混同があり,眠気はあるが容易に覚醒する.神経学的検査および一般検査でのその他の所見は正常.
Na 138 mEq/L, K 4.8 mEq/L,Cl 102 mEq/L,HCO3- 14 mEq/L
Lac 0.7 mmol/L,pH 7.31,pCO2 29 mmHg.
この患者の意識障害の原因は?
 A.アセトアミノフェン B.アスピリン C.D-乳酸アシドーシス D.ドネペジル

まとめ
 疑わないと診断できないと思います.
 敗血症で入院となり解熱剤としてアセトアミノフェンを使用して原因不明の代謝性アシドーシスが進行して状態が悪化というパターンにも注意です.
 アセトアミノフェン(®カロナール)を定期内服している患者に原因不明のアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスをみたときに原因としてピログルタミン酸(5-オキソプロリン)を考える.

参考文献
Fenves AZ. Increased anion gap metabolic acidosis as a result of 5-oxoproline (pyroglutamic acid): a role for acetaminophen. Clin J Am Soc Nephrol. 2006;1:441-7.
Humphreys BD. Acetaminophen-induced anion gap metabolic acidosis and 5-oxoprolinuria (pyroglutamic aciduria) acquired in hospital. Am J Kidney Dis. 2005;46:143-6.

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guni
総合内科医として勤務。最近は主に内分泌代謝疾患と感染症がメインです。日々勉強したことを投稿しています。皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。なお個別の相談には応じておりません。