Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by IDSA
- 背景
- 抗真菌薬の概要
- 推奨一覧
- 好中球数が正常な患者におけるカンジダ血症の治療は?
- 好中球数が正常な患者のカンジダ血症において中心静脈カテーテルは抜去すべき?
- 好中球減少患者におけるカンジダ血症の治療は?
- 慢性播種性(肝脾)カンジダ症の治療は?
- ICUの好中球数正常患者におけるカンジダ血症疑いに対する経験的治療の意義は?
- ICUにおいてカンジダ血症の予防はすべき?
- 中枢神経感染を含めた新生児のカンジダ血症の治療は?
- 新生児の中枢神経感染症の治療は?
- 新生児のICUにおいての予防の推奨は?
- 腹腔内カンジダ感染症の治療は?
- 呼吸器検体からのカンジダ検出は治療対象?
- カンジダによる感染性心内膜炎の治療は?
- 心臓植え込みデバイスのカンジダ感染症の治療は?
- カンジダによる化膿性血栓性静脈炎の治療は?
- カンジダ骨髄炎の治療は?
- カンジダ化膿性関節炎の治療は?
- カンジダ眼内炎のアプローチは?
- 硝子体炎を伴わないカンジダ脈絡網膜炎の治療は?
- 硝子体炎を伴うカンジダ脈絡網膜炎の治療は?
- 中枢神経のカンジダ感染症の治療は?
- 無症状のカンジダ尿症の治療は?
- カンジダ膀胱炎の治療は?
- 症候性の上行性カンジダ腎盂腎炎の治療は?
- Fungus Ballsが関連したカンジダ尿路感染症の治療は?
- 外陰部カンジダ症の治療は?
- 口腔咽頭カンジダ症の治療は?
- 食道カンジダ症の治療は?
背景
ヒトに病原性を示すカンジダ種は最低15種はいるが、90%以上はC. albicans, C. glabrata, C. tropicalis, C. parapsilosis, and C. kruseiの5種によって起こされる。
C. parapsilosisは中心静脈カテーテルとの関連が強いカンジダ種である。
侵襲性カンジダ症において血液培養の感度は50%と低い。また血液培養が陽性になるまでの中央値は2-3日、範囲は1~7日以上と遅い。
カンジダ血症の1/2〜2/3はICU患者に起きる。侵襲性カンジダ症のリスク因子はカンジダの定着、重症患者、広域抗菌薬の曝露、最近の手術(特に腹部手術)、壊死性膵炎、透析、経静脈栄養、グルココルチコイド、中心静脈カテーテル使用など。術後患者の繰り返す消化管穿孔、吻合部リーク、急性壊死性膵炎はカンジダ感染のハイリスクである。
抗真菌薬の概要
アゾール系
アゾール系はC. glabrata、C. kruseiに対して他のカンジダ種と比べて活性が低い。
全てのアゾール系はCYP450を抑制するので、開始・中止する際は薬物相互作用に注意しなければならない。
フルコナゾール
フルコナゾールは髄液・硝子体内移行がよく、血中濃度の70%以上となる。よって中枢神経や眼のカンジダ感染症においてフルコナゾールは頻用される。フルコナゾールは尿中濃度が血中濃度の10-20倍になるため、症候性の膀胱炎などで望ましい治療である。侵襲性カンジダ症においてフルコナゾールは800mg(12mg/kg)のloading doseのあと、400mg(6mg/kg)/日の投与を行うべきである。感受性があるC. glabrataに対しては高用量(800mg, 12mg/kg/日)の治療がよく推奨されるが、これを検討した臨床試験はない。フルコナゾールはほとんど腎排泄なので、CCr50mL/分未満では減量が必要である。
イトラコナゾール
イトラコナゾールは経口のみで、侵襲性カンジダ症においてはあまり研究されていない。通常はフルコナゾール抵抗性の口腔カンジダ症に使用される。
ボリコナゾール
ボリコナゾールは粘膜、侵襲性カンジダ症いずれにおいても有効性が示されている。ボリコナゾールはC. kruseiやフルコナゾール耐性・ボリコナゾール感受性のC. glabrataの治療において経口へのStep downの際に用いられることが多い。ボリコナゾールは中枢神経や硝子体において血中濃度の50%以上の濃度となり、これらの部位の感染治療において有効性がケースシリーズで示されている。ボリコナゾールは尿中に活性体として蓄積されないため、カンジダによる尿路感染症の治療には用いるべきではない。成人においては400mg(6mg)1日2回でloadingし、200-300mg(3-4mg/kg)/1日2回投与が推奨量である。点滴の場合は6mg/kg 12時間毎2回でloadingして、3-4mg/kg 12時間毎の投与が推奨される。点滴製剤では添加されているシクロデキストリン蓄積に伴う腎障害のリスクがあるため、CCr<50mL/分の患者への投与は現在推奨されない。しかし後方視的研究で、さまざまな腎機能障害を伴う患者において腎毒性がなかったため、今後このcut offは緩和される可能性がある。経口のボリコナゾールは腎機能調整は必要ないが、肝障害において減量が必要な唯一のアゾール系である。
ボリコナゾールの代謝酵素の遺伝子によくある多型でその血中濃度は様々となる。また薬物相互作用が多いので、開始と中止時には注意する。ボリコナゾールはC. krusei以外のフルコナゾール耐性のカンジダ種への使用は検討されていないので、使用は現在推奨されていない。ボリコナゾールはTDMが必要な薬剤で、トラフ値の目標は1.0-5.5mg/Lである。
ポサコナゾール
ポサコナゾールはカンジダ症の第一選択ではない。in vitroではカンジダ種に対してボリコナゾールと同様の活性を示すが、臨床データが不足している。
エキノキャンディン系
カスポファンギン、アニデュラファンギン、ミカファンギンが点滴製剤として使用可能である。C. glabrataやC. kruseiを含めてほとんどカンジダ種において、エキノキャンディン系のMICは低い。しかし近年のケースシリーズで、C. glabrata耐性株による治療失敗の報告がある。C. parapsilosisは他のカンジダ種と比べてもともとエキノキャンディン系に対するMICが高く、エキノキャンディン系に対して反応性が乏しい懸念がある。
エキノキャンディン系は全て副作用が少ない。眼、中枢神経、尿以外の感染部位において有効な血中濃度が得られる。腎機能や透析でも用量調節は不要である。カスポファンギンのみが肝機能障害のときに減量が必要となる。侵襲性カンジダ症に対する用量はカスポファンギンは70mg loading dose、50mg/日、anidulafunginは200mg loading dose、100mg/日、ミカファンギンは100mg/日(loading doseは不要)。
フルシトシン
C. kruseiを除く、ほとんどのカンジダ種に活性を示す。半減期が2.4-4.8時間と短いため、腎機能が正常な場合25mg/kgを1日4回投与する。バイオアベイラビリティーは80-90%と良好で、薬剤のほとんどは活性型のまま尿中に排泄される。腎機能に応じて用量調節が必要となる。中枢神経や眼に高い移行性を示す。濃度依存性に骨髄抑制と肝炎を起こす。単剤では耐性化率が高いため、通常他の抗真菌薬と併用する。カンジダ感染症におけるフルシトシンは、感染心内膜炎、髄膜炎、眼内炎などの難治性感染症においてAmBと併用で使用されることが多い。フルコナゾール耐性のC. glabrataによる症候性尿路感染症の治療に使用されることもある。
アムホテリシンB
アムホテリシンBはC. lusitaniaeを除くすべてのカンジダ種に有効である。C. lusitaniaeはしばしば耐性を示す。
推奨一覧
好中球数が正常な患者におけるカンジダ血症の治療は?
- エキノキャンディン(カスポファンギン:loading dose 70mg, then 50mg daily; ミカファンギン 100mg daily; anidulafungin: loading dose 200 mg, then 100 mg daily)が初期治療として推奨される。
- フルコナゾール 静注 or 経口、800mg(12mg//kg) loading dose, then 400mg (6mg/kg)/dailyの初期治療は重症ではなく、フルコナゾール耐性のカンジダ種の可能性が低い場合はミキノキャンディン系の代替薬として許容される。
- アゾール系の感受性は全てのカンジダ血症、他の臨床的重要なカンジダ種の場合は行う。エキノキャンディン系に対する感受性は以前エキノキャンディン系の治療を受けていた場合や、C. glabrataもしくはC. parapsilosis感染の場合は行う。
- エキノキャンディン→フルコナゾールへの変更(通常5-7日以内)は臨床的に安定し、フルコナゾールに感受性で、抗真菌薬開始後にフォロー血培が陰性化していたら推奨される。
- C. glabrataによる感染症の場合、高用量のフルコナゾール 800mg (12mg/kg) dailyまたはボリコナゾール 200-300mg (3-4mg/kg) 1日2回投与への変更をそれぞれ感受性がある場合のみに考慮すべき。
- アムホテリシンB脂質製剤(3-5mg/kg daily)は他の抗真菌薬に対する不耐、抵抗などがある場合は妥当な代替薬である。
- ボリコナゾール 400mg (6mg/kg) 1日2回, then 200mg (3mg/kg)1日2回はカンジダ血症に有効であるが、フルコナゾールによる初期治療と比べてほとんど利点はない。C. kruseiによるカンジダ血症の一部においてstep-down経口治療としてボリコナゾールが推奨される。
- 全ての好中球数正常なカンジダ血症患者に対して診断後1週間以内の眼科医による散瞳後の眼底検査を受けるべきである。
- カンジダ血症の陰性日を確認するためフォローの血液培養は毎日もしくは隔日で採取する。
- カンジダ血症の治療期間は明らかな遠隔転移病変がない場合は、最終血液培養陰性から2週間が推奨される。
好中球数が正常な患者のカンジダ血症において中心静脈カテーテルは抜去すべき?
- 中心静脈カテーテルからの感染が推定され、安全に抜去できる場合はできるだけ早く抜去すべき。
好中球減少患者におけるカンジダ血症の治療は?
- エキノキャンディン(カスポファンギン:loading dose 70mg, then 50mg daily; ミカファンギン 100mg daily; anidulafungin: loading dose 200 mg, then 100 mg daily)が初期治療として推奨される。
- アムホテリシンB脂質製剤(3-5mg/kg daily)は有効だが、毒性のリスクのため積極的には推奨されない代替薬である。
- フルコナゾール 静注 or 経口、800mg(12mg//kg) loading dose, then 400mg (6mg/kg)/dailyの初期治療は重症ではなく、アゾール曝露が以前にない場合は代替薬として考慮される。
- フルコナゾール400mg (6mg/kg) dailyは臨床的に安定し、感受性があり、血培陰性で好中球減少が持続している患者においてstep down治療として使用可能である。
- ボリコナゾール 400mg (6mg/kg) 1日2回, then 200mg (3mg/kg)1日2回は他の真菌カバーが必要なときには使用可能である。フルコナゾールと同様にstep down治療として使用可能である。
- C. krusei感染症において、エキノキャンディン、アムホテリシンB脂質製剤、ボリコナゾールが推奨される。
- 遠隔転移病変がないカンジダ血症の治療期間は好中球減少とカンジダ血症の症状が改善している場合、最終血液培養陰性日から最低2週間が推奨される。
- 脈絡膜や硝子体感染の眼科的所見は、好中球減少症から回復するまでほとんど認められない。したがって、拡張眼底鏡検査は好中球減少症から回復後1週間以内に行うべき。
- 好中球減少患者においてカンジダ血症のソースはCVCより消化管など他の部位が多いため、CVCの抜去については個別に判断すべきである。
- 好中球減少の長期化が予想される持続性カンジダ症では、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)固定化顆粒球輸血を考慮することができる。
慢性播種性(肝脾)カンジダ症の治療は?
- アムホテリシンB脂質製剤 3-5mg/kg dailyまたはエキノキャンディン(カスポファンギン:loading dose 70mg, then 50mg daily; ミカファンギン 100mg daily; anidulafungin: loading dose 200 mg, then 100 mg daily)による初期治療を数週間行うことが推奨される。その後フルコナゾール耐性の可能性が低い場合はフルコナゾール 400mg (6mg/kg) dailyによる経口治療を行う。
- 治療は繰り返す画像検査で改善されるまで続けるべきであり、通常数ヶ月かかる。抗真菌薬の早期終了によって再発しうる。
- 化学療法や造血幹細胞移植が必要な場合は、慢性播種性カンジダ症の存在を理由に延期すべきではない。抗真菌薬は再発予防のために高リスク期間は続けるべきである。
- 消耗するような発熱が持続する場合は、短期間(1-2週間)のNSAIDsやグルココルチコイドによる治療が考慮されうる。
ICUの好中球数正常患者におけるカンジダ血症疑いに対する経験的治療の意義は?
- 重症患者でカンジダ血症のリスクがあり、他の熱源がはっきりしない場合は経験的真菌治療が考慮されるべきである。カンジダ血症のリスクがあり敗血症性ショックの場合はできるだけ早く経験的治療を開始すべきである。
- 推奨される経験的治療はエキノキャンディン(カスポファンギン:loading dose 70mg, then 50mg daily; ミカファンギン 100mg daily; anidulafungin: loading dose 200 mg, then 100 mg daily)である。
- フルコナゾール 800mg(12mg//kg) loading dose, then 400mg (6mg/kg)/dailyの初期治療は最近のアゾール曝露がなく、アゾール耐性のカンジダ種の定着がない場合は代替薬として許容される。
- アムホテリシンB脂質製剤 3-5mg/kg dailyは他の抗真菌薬に耐性の場合は代替薬である。
- 経験的治療の治療期間はカンジダ血症疑いが改善している場合は2週間である。
- 4-5日間の経験的治療に反応がなく、培養検査などが陰性でカンジダ血症の確証がない場合は抗真菌薬の中止を検討すべきである。
ICUにおいてカンジダ血症の予防はすべき?
- フルコナゾール 800mg(12mg//kg) loading dose, then 400mg (6mg/kg)/dailyは5%以上のカンジダ血症のリスクがある高リスクの成人ICU患者では使用可能である。
- 代替薬はエキノキャンディンである。
- クロルヘキシジンを使用した毎日の入浴はICU患者においてカンジダ血症を含めて血流感染症を減らすことが示されているので、考慮してもよい。
中枢神経感染を含めた新生児のカンジダ血症の治療は?
- アムホテリシンBデオキシコール酸 1mg/kg dailyは新生児の播種性カンジダ症に対して推奨される。
- フルコナゾール 12mg/kg 点滴or経口 dailyはフルコナゾール予防がなされていない患者では妥当な代替薬である。
- アムホテリシンB脂質製剤は代替薬であるが、尿路感染症がある場合は特に注意して使用すべきである。
- エキノキャンディンはアムホテリシンBデオキシコール酸やフルコナゾールに対する耐性や毒性で使用できない場合にsalvage治療として慎重に使用すべきである。
- 新生児においてカンジダが血液±尿路から検出された場合は腰椎穿刺と散瞳眼底鏡検査が推奨される。
- カンジダ持続菌血症の場合はCTもしくは超音波で尿路・肝臓・脾臓を精査すべきである。
- 中心静脈カテーテル抜去は強く推奨される。
- カンジダ血症の治療期間は明らかな遠隔転移病変がない場合は、最終血液培養陰性から2週間が推奨される。
新生児の中枢神経感染症の治療は?
- 初期治療としてアムホテリシンBデオキシコール酸 1mg/kg dailyが推奨される。
- 代替薬はリポソーマルアムホテリシンB 5mg/kg dailyである。
- アムホテリシンB初期治療に臨床的反応がない場合は、フルシトシン25mg/kg 1日4回投与の追加がsalvage治療として考慮されうるが、副作用は多い。
- 初期治療に反応したあとのstep down治療は、感受性がある場合フルコナゾール 12mg/kgが推奨される。
- 治療は全ての症状・所見、髄液所見・画像異常が改善するまでは継続すべきである。
- 可能ならドレーンやシャントなど感染したCNSデバイスを全て抜去すべきである。
新生児のICUにおいての予防の推奨は?
- カンジダ血症のリスクが10%以上の場合は、予防的フルコナゾール点滴もしくは経口投与、3-6mg/kg週2回投与、6週間が出生時体重1000g未満の新生児に対して推奨される。
腹腔内カンジダ感染症の治療は?
- 腹腔内感染症の臨床的所見があり、最近の腹部手術、吻合部リーク、壊死性膵炎などのカンジダ症のリスクがある場合は経験的治療を考慮すべきである。
- 腹腔内カンジダ感染症の治療は、適切なドレナージ±デブリドマンによるソースコントロールが含まれるべきである。
- 抗真菌薬の選択はカンジダ血症や好中球数正常なICU患者における経験的治療と同様である。
- 治療期間は適切なソースコントロールと臨床的改善によって決定されるべきである。
呼吸器検体からのカンジダ検出は治療対象?
- 呼吸器検体からのカンジダ種の検出は通常定着であり、抗真菌薬治療を要することは稀である。
カンジダによる感染性心内膜炎の治療は?
- 自然弁の場合、アムホテリシンB脂質製剤3-5mg/kg daily±フルシトシン 25mg/kg 1日4回もしくは高用量エキノキャンディン(カスポファンギン150mg/日、ミカファンギン150mg/日、anidulafungin 200mg/日)が初期治療として推奨される。
- フルコナゾール 400-800mg(6-12mg/kg)/日へのstep down治療は感受性があり、臨床的に安定し、血液培養が陰性の場合は推奨される。
- ボリコナゾール 200-300mg(3-4mg/kg)1日2回経口投与、もしくはポサコナゾール300mg/日はフルコナゾールに耐性でこれらの抗真菌薬に感受性の場合はstep down治療として使用可能である。
- 弁置換術が推奨される。治療期間は術後最低6週間で、弁周囲膿瘍や他の合併症がある場合はより長期間の治療を行う。
- 弁置換術ができない患者では、感受性がある場合フルコナゾール400-800mg(6-12mg)/日による長期間のsuppressionが推奨される。
- 人工弁の感染性心内膜炎の場合、同様の抗真菌薬レジメンが推奨される。再発予防のために感受性がある場合フルコナゾール400-800mg(6-12mg)/日による長期間のsuppressionが推奨される。
心臓植え込みデバイスのカンジダ感染症の治療は?
- ペースメーカーや植込み型除細動器感染症において、すべてのデバイスを除去すべき。
- 自然弁の感染性心内膜炎と抗真菌薬治療は同様の推奨である。
- ポケット部位のみの感染症では、デバイス除去後に4週間の抗真菌薬治療が推奨される。
- ワイヤーも感染していた場合は、デバイス除去後に6週間の抗真菌薬治療が推奨される。
- 除去できない心室アシストデバイスの場合、感受性がある場合はフルコナゾールのsuppressive治療をデバイスが存在する限り行うことが推奨される。
カンジダによる化膿性血栓性静脈炎の治療は?
- カテーテル抜去と静脈切開とドレナージまたは切除が可能なら推奨される。
- アムホテリシンB脂質製剤3-5mg/kg/日またはフルコナゾール400-800mg(6-12mg/kg)/日またはエキノキャンディン(カスポファンギン150mg/日、ミカファンギン150mg/日、anidulafungin 200mg/日)による治療を血液培養陰性から最低2週間行うことが推奨される。
カンジダ骨髄炎の治療は?
- フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日を6-12ヶ月またはエキノキャンディン(カスポファンギン50-70mg/日、ミカファンギン100mg/日、anidulafungin 100mg/日)を2週間行い、その後フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日を6-12ヶ月が推奨される。
- アムホテリシンB脂質製剤3-5mg/kg/日を最低2週間行い、その後フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日を6-12ヶ月は代替治療だが、あまり好ましくない。
- 一部の患者には、外科的デブリドマンが推奨される。
カンジダ化膿性関節炎の治療は?
- フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日を6週間またはエキノキャンディン(カスポファンギン50-70mg/日、ミカファンギン100mg/日、anidulafungin 100mg/日)を2週間行い、その後フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日を最低4週間が推奨される。
- アムホテリシンB脂質製剤3-5mg/kg/日を最低2週間行い、その後フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日を最低4週間は代替治療だが、あまり好ましくない。
- 化膿性関節炎は全症例で外科的ドレナージの適応である。
- 人工関節に感染している場合は、抜去が推奨される。
- 人工関節が抜去できない場合は、感受性があればフルコナゾール400mg(6mg/kg)/日によるchronic suppressionが推奨される。
カンジダ眼内炎のアプローチは?
- カンジダ血症患者は全例眼科医による散瞳眼底検査を受けるべきである。好中球数正常な患者では1週間以内、好中球減少患者では改善後1週間以内。
- 眼感染(黄斑部病変の有無、硝子体炎の有無にかかわらず脈絡膜網膜炎)の程度は、眼科医が判断すべきである。
- 抗真菌治療や外科的介入に関する決定は、眼科医と感染症専門医が共同で行うべきである。
硝子体炎を伴わないカンジダ脈絡網膜炎の治療は?
- フルコナゾール/ボリコナゾール感受性株の場合、フルコナゾール loading dose 800mg(12mg/kg) then 400-800mg(6-12mg/kg)またはボリコナゾール loading dose 400mg(6mg/kg) 1日2回点滴 then 300mg (4mg/kg)点滴または経口、1日1回が推奨される。
- フルコナゾール/ボリコナゾール耐性株の場合、アムホテリシンB脂質製剤3-5mg/kg/日±フルシトシン25mg/kg1日4回内服が推奨される。
- 黄斑部病変がある場合、上記の抗真菌薬に加えて、アムホテリシンBデオキシコール酸またはボリコナゾールの硝子体内投与が推奨される。
- 治療期間は最低4-6週間だが、最終的な治療期間は眼科医による繰り返しの診察による病変の改善によって決定される。
硝子体炎を伴うカンジダ脈絡網膜炎の治療は?
- 抗真菌薬は硝子体炎がない場合と同様で、加えてアムホテリシンBデオキシコール酸またはボリコナゾールの硝子体内投与が推奨される。
- 硝子体切除術は菌量を減らすこと、抗真菌薬が届かない真菌膿瘍を取り除くために考慮されるべきである。
- 治療期間は最低4-6週間だが、最終的な治療期間は眼科医による繰り返しの診察による病変の改善によって決定される。
中枢神経のカンジダ感染症の治療は?
- 初期治療として、リポソーマルアムホテリシンB 5mg/kg/日±フルシトシン 25mg/kg 1日4回投与が推奨される。
- 初期治療反応後は、Step down治療としてフルコナゾール400-800mg(6-12mg/kg)/日が推奨される。
- 治療は全ての症状・所見、髄液と画像異常が改善するまで行う。
- 感染したCNSデバイスは、可能なら取り除く。
- 脳室デバイスが取り除けない場合は、アムホテリシンBデオキシコール酸をデバイスを通じて脳室内投与することも可能である。
無症状のカンジダ尿症の治療は?
- 尿道カテーテルなどリスク因子を取り除くことは可能なら推奨される。
- 好中球減少患者、超低出生児(<1500g)、泌尿器手術予定などの高リスク患者以外は抗真菌薬の投与は推奨されない。
- 好中球減少患者と超低出生児はカンジダ血症と同様に治療するべきである。
- 泌尿器手術前の患者は、経口フルコナゾール400mg(6mg/kg)/日またはアムホテリシンBデオキシコール酸0.3-0.6mg/kg/日による治療を手術前後の数日間行う。
カンジダ膀胱炎の治療は?
- フルコナゾール感受性の場合、フルコナゾール200mg(3mg/kg)/日内服2週間の治療が推奨される。
- フルコナゾール耐性のC.glabrataの場合、アムホテリシンBデオキシコール酸0.3-0.6mg/kg/日を1-7日間または経口フルシトシン25mg1日4回7-10日間が推奨される。
- C.Kruseiでは、アムホテリシンBデオキシコール酸0.3-0.6mg/kg/日を1-7日間が推奨される。
- 膀胱カテーテル抜去が可能なら、強く推奨される。
- アムホテリシンBデオキシコール酸の膀胱内還流、50mg/Lの滅菌水5日間はフルコナゾール耐性のC.glabrataやC.Kruseiの場合は役立つかもしれない。
症候性の上行性カンジダ腎盂腎炎の治療は?
- フルコナゾール感受性の場合、フルコナゾール200-400mg(3-6mg/kg)/日内服2週間の治療が推奨される。
- フルコナゾール耐性のC.glabrataの場合、アムホテリシンBデオキシコール酸0.3-0.6mg/kg/日を1-7日間±経口フルシトシン25mg1日4回が推奨される。
- フルコナゾール耐性のC.glabrataの場合、経口フルシトシン25mg1日4回単剤治療2週間は考慮されうる。
- C. Kruseiの場合、アムホテリシンBデオキシコール酸0.3-0.6mg/kg/日を1-7日間が推奨される。
- 尿路閉塞の解除は強く推奨される。
- 腎瘻がある場合は抜去や再置換が可能なら考慮される。
Fungus Ballsが関連したカンジダ尿路感染症の治療は?
- 成人の場合は外科的介入が強く推奨される。
- 上記の膀胱炎や腎盂腎炎と同様の抗真菌薬治療が推奨される。
- もしあれば腎瘻を介してアムホテリシンBデオキシコール酸による還流が推奨される。
外陰部カンジダ症の治療は?
- 非複雑性の外陰部カンジダ症の場合、局所の抗真菌薬治療が推奨される。
- 代替治療としてフルコナゾール150mg1回内服も推奨される。
- 重度の急性外陰部カンジダ症の場合、フルコナゾール150mgを3日に1回、2-3回が推奨される。
- C.glabrataによる外陰部カンジダ症で経口アゾールに反応しない場合、ゼラチンカプセルを介した局所の膣内ホウ酸、600mg、14日間は代替治療。
- C.glabrataに対する代替治療はnystatin膣内10万単位14日間がある。
- 3番目の選択肢として、局所の17%フルシトシンクリーム単剤もしくは3%AmBクリームと合わせて14日間の投与がある。
- 再発性の外陰部カンジダ症に対して、10-14日間の導入治療として局所またはフルコナゾール経口内服を行い、その後フルコナゾール150mg内服週1回を6ヶ月間行うことが推奨されている。
口腔咽頭カンジダ症の治療は?
- 軽度の場合、クロトリマゾールトローチ10mg1日5回もしくはミコナゾール50mg口腔錠を病変部位に1日1回7-14日間投与が推奨される。
- 軽症に対する代替薬として、ナイスタチン懸濁液10万単位/mLを4-6mL1日4回またはナイスタチントローチ20万単位1日4回を7-14日間投与が推奨される。
- 中等度〜重度の場合、フルコナゾール100-200mg内服を7-14日間が推奨される。
- フルコナゾール抵抗性の場合、イトラコナゾール溶液200mg/日もしくはポサコナゾール懸濁液400mg1日2回を3日間、その後400mg1日1回を最大28日間が推奨される。
- フルコナゾール抵抗性の場合の代替薬として、ボリコナゾール200mg1日2回もしくはアムホテリシンBデオキシコール酸懸濁液100mg/mLを1日4回が推奨される。
- エキノキャンディン点滴やアムホテリシンBデオキシコール酸0.3mg/kg/日の点滴投与は抵抗性の場合の代替薬。
- chronic suppressive治療は通常不要である。もし再発性で必要な場合は、フルコナゾール100mg週3回が推奨される。
- HIV感染者の場合、ARTが再発予防のために強く推奨される。
- 義歯関連のカンジダ症の場合、抗真菌薬治療に加えて義歯の消毒が推奨される。
食道カンジダ症の治療は?
- 抗真菌薬の全身投与が常に必要である。内視鏡施行前の診断的治療は妥当である。
- フルコナゾール 200-400mg(3-6mg/kg)/日 内服、14-21日間が推奨される。
- 内服ができない場合、フルコナゾール点滴400mg(6mg/kg)日またはエキノキャンディン(ミカファンギン150mg/日またはカスポファンギン70mg loading dose, then 50mg/日、anidulafungin 200mg/日)が推奨される。
- 経口治療ができない場合、AmBデオキシコール酸0.3-0.7mg/kg/日は代替案だが積極的に推奨されない。
- 経口治療ができるようになった場合は、フルコナゾール内服へのStep down治療を考慮する。
- フルコナゾール抵抗性の場合、イトラコナゾール内用液200mg/日またはボリコナゾール200mg(3mg/kg)1日2回経口または点滴を14-21日間が推奨される。
- フルコナゾール抵抗性の場合の代替治療として、エキノキャンディン14-21日間またはAmBデオキシコール酸21日間の治療がある。
- ポサコナゾール懸濁液400mg1日2回または徐放製剤300mg1日1回はフルコナゾール抵抗性の場合に考慮される。
- 再発性の食道炎の場合、フルコナゾールによるchronic suppression、100-200mg週3回が推奨される。
- HIV感染患者の場合、再発予防のためARTが強く推奨される。