内分泌

TSH分泌低下症の診断の手引き

TSH分泌低下症の診断の手引き

I. 主症候(注1)
 1. 耐寒能の低下
 2. 不活発
 3. 皮膚乾燥
 4. 徐脈
 5. 脱毛
 6. 発育障害

II. 検査所見
 1. 血中甲状腺ホルモン(特に遊離T4)の低値(注2)
 2. 血中TSHは低値~軽度高値(注3)
 3. 画像検査で間脳下垂体に器質性疾患を認める. あるいは, 頭蓋内器質性疾患の合併, 既往歴, 治療歴, または周産期異常の既往歴を有する.
 4. TRH試験(200~500µg)に対する血中TSH(注4)
  1) 低反応または無反応
  2) 遷延または遅延反応を示す(注5).

III. 除外規定
 TSH分泌を低下させる薬剤投与を除く.
 非甲状腺疾患(nonthyroidal illness, low T3症候群)を除外する(注2).

[診断基準]
確実例: Iの1項目以上とIIの1, 2, 3を満たす. または, Iの1項目以上とIIの1, 2 と4の1)あるいは2)を満たすもの.
ほぼ確実例: IIの1と2を満たすもの.

(注1) 自覚症状の乏しい症例もある.

(注2) 血中遊離T3が低値, 遊離T4が正常の場合には, nonthyroidal illness(low T3症候群)が疑われるが, さらに重症例では遊離T4, TSHも低値となる.

(注3) 間脳下垂体腫瘍による中枢性甲状腺機能低下症では, 血中TSHは基準値内を示すことが多い. 少数例では軽度高値を示すこともある. 生物活性の乏しいTSHが分泌されている可能性がある. TRH試験後の血中T3増加率(120分後)は, 原発性甲状腺機能低下症を除外できていれば, 生物学的活性の乏しいTSHが分泌されている可能性の鑑別に参考となる.

(注4) 下垂体腫瘍(腺腫)が大きい場合は下垂体卒中の危険性があることを施行前に十分説明する必要がある.

(注5) 正常反応も少なくない. 視床下部性の場合は, TRHの1回または連続投与で正常反応を示すことがある. また, TRH受容体異常によって, 血中TSHの低値とTRH試験での低反応が認められることがある.

間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン 2023年

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。