皮膚

皮膚小血管炎 CSVV cutaneous small vessel vasculitis

ポイント

  1.  下肢の触知可能な紫斑を診たときにIgA血管炎・皮膚小血管炎を鑑別する
  2.  血管炎が皮膚に限局しているのか、それとも全身性血管炎の一部を診ているのか判断する
  3.  皮疹出現から24-48時間以内の早期の皮膚生検が診断のkeyとなる
  4.  皮膚小血管炎の原因は特発性・感染症・薬剤・膠原病・悪性腫瘍で考える

〈概念〉
皮膚小血管炎は下肢の触知可能な紫斑を呈する
皮膚小血管炎を診たときには血管炎が皮膚に限局しているのか、全身性血管炎の一部を診ているのかを判断するのが重要。
最初は皮膚のみでも、後に全身性血管炎に進展することがあるので注意深くフォローする必要がある。
 特に初期のIgA血管炎は他の非IgA関連血管炎と見分けることは難しい。
  早期の皮膚生検でIgA・C3沈着がないか検討する。陰性であれば再生検も検討する。
  IgA血管炎が否定的で他の血管炎に該当しない場合に除外診断的に皮膚小血管炎とする。
 総じて皮膚のみに限局する小血管炎は急性かつ一過性で予後は良い。
小児では非IgA小血管炎よりもIgA血管炎よりも多い。
成人では全身性血管炎、膠原病、悪性腫瘍が背景にあることが多い。
薬剤や感染症に伴う血管炎は暴露から7-10日後程度に発症することが多いが、さまざま。
 先行感染や新規薬剤の有無を詳細に問診する。

〈原因〉
特発性 45-55%
薬剤性 10-15%
 抗生剤(特にβラクタム系)が多い。他にはNSAIDs・G-CSF製剤・PTU・TNFα阻害薬など。
感染症 15-20%
 A群β溶連菌HCVが多い。
膠原病 15-20%
 ANCA関連血管炎・関節リウマチ・SLE・シェーグレン症候群・皮膚筋炎など
悪性腫瘍 <5%

皮膚小血管炎の原因薬剤

〈症状〉
皮疹部位の掻痒感を訴えることはあるが、痛みを訴えることは稀。
 潰瘍や結節を伴う場合は中血管炎の関与も疑う。


発熱・体重減少・関節痛・腹痛・筋肉痛・黒色便・下血・咳嗽・喀血・呼吸苦・血尿・鼻水・しびれ・脱力・下垂足などがあれば全身性血管炎を考慮する。
IgA血管炎では腹痛や消化管出血を65%、関節痛や関節炎を63%、血尿など腎病変を40%に伴う。

〈検査〉
感染症や薬剤など明らかな誘引があれば一般的な血液検査と尿検査で十分。
明らかな原因がなければ感染症(血液培養・HBV・HCV・HIV・ASLO)、膠原病(ANCA・RF・クリオグロブリン)、補体(C3・C4・CH50)、免疫固定法を提出する。


皮膚生検
 皮疹出現から24-48時間以内に行うことが重要
  48時間以上経過すると好中球よりも単球主体の炎症所見が目立ち非特異的な所見となってしまう。
   さらにIgA・IgG・IgMなどの免疫グロブリンも偽陰性となってしまう。
 好中球が皮膚の上層・中層の小血管に浸潤、顆粒球のデブリ、白血球破壊に伴う核破片・フィブリノイド壊死、血管壁の破壊、赤血球の血管外への漏出の所見が白血球破壊性血管炎の典型的な病理所見。
 好酸球の浸潤は薬剤性を示唆するかもしれない。
 肉芽腫性血管炎の存在はGPAやEGPAを示唆する。
 直接免疫蛍光法
  IgAの血管壁の沈着はIgA血管炎を示唆する
  IgMはクリオグロブリン血管炎やリウマチ性血管炎と関連がある
  C3やIgGのバンド形成はSLEや蕁麻疹性血管炎を示唆する

〈鑑別疾患〉
IgA血管炎、ANCA関連血管炎、結節性多発動脈炎、クリオグロブリン血管炎、リウマチ性血管炎、蕁麻疹性血管炎など


〈治療〉
全身性血管炎の場合はその治療に準じる
皮膚限局性の場合は一過性のことが多いので基本的にまずは原疾患の治療と対症療法
重症・難治性・再発性の場合は全身治療が必要となる
 コルヒチン0.6mg 1日2-3回は小規模な試験で有用性が示されている。
 ダプソン50-200mg/day
他にはヒドロキシクロロキン、プレドニゾロン0.5-1.0mg/kg/day、アザチオプリン、メトトレキサート、MMFなどが治療の選択肢となる。

〈予後〉
多くの皮膚小血管炎は多少の色素沈着を残して3-4週間で改善して、再発しない。
8-10%が慢性 or 再発性となるが、全体的に予後は良い。
IgA血管炎も数週から数ヶ月(平均4週)の罹病期間。短くする治療はいまだない。
 IgA血管炎の予後は概ね良いが、腎病変の重症度による。腎障害や合併症は小児より成人に多い。

ポイント

  1.  下肢の触知可能な紫斑を診たときにIgA血管炎・皮膚小血管炎を鑑別する
  2.  血管炎が皮膚に限局しているのか、それとも全身性血管炎の一部を診ているのか判断する
  3.  皮疹出現から24-48時間以内の早期の皮膚生検が診断のkeyとなる
  4.  皮膚小血管炎の原因は特発性・感染症・薬剤・膠原病・悪性腫瘍で考える

〈参考文献〉
Micheletti RG. Small vessel vasculitis of the skin. Rheum Dis Clin North Am. 2015;41(1):21-32, vii. PMID: 25399937.
Goeser MR. A practical approach to the diagnosis, evaluation, and management of cutaneous small-vessel vasculitis. Am J Clin Dermatol. 2014 Aug;15(4):299-306. PMID: 24756249.
Up to date “Overview of cutaneous small vessel vasculitis”

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。