血液

急性前骨髄球性白血病における分化症候群 Differentiation syndrome in acute promyelocytic leukaemia

ポイント

  1. 急性前骨髄球性白血病に対してATRAが開始された患者において、原因不明の発熱、呼吸困難、体重増加、原因不明の低血圧、全身性浮腫、AKIなどを認めたら分化症候群を疑いステロイドを早期に開始する

〈概念〉
急性前骨髄球性白血病に対してATRA治療を開始した割と早期に25%程度に発症する症候群(以前はレチノイン酸症候群と呼ばれていた)
 ATRA導入でサイトカインが放出されることによって起こる。
 発熱と毛細血管漏出症候群(低血圧、全身性浮腫、肺水腫)が特徴的
  胸水、心嚢水、心タンポナーデなどもみられることがある。
ATRA開始から発症までの期間は平均12日(0-46日

〈症状〉
発熱、呼吸困難、体重増加(>5kg)、原因不明の低血圧

〈検査〉
血液検査:AKI
CXR:肺水腫、胸水、心嚢水

〈診断〉
確立した診断基準はない

〈治療〉
デキサメタゾン10mg 12時間ごとに投与 
    改善がない場合は6時間毎に増量する
重症例ではATRAを中止する

〈予防〉
WBC>5万のAPLではステロイドによる予防を検討する
 プレドニゾロン0.5mg/kg/dayをinduction therapyが終わるまで継続
 デキサメタゾン2.5mg/m2を12時間毎に投与 day1-15まで
 プレドニゾロン1mg/kg/day day1-10まで

〈予後〉
早期のステロイド加療によって死亡率はだいたい1%程度
 治療開始1週間以内の早期のsevere DSは死亡率が高い

ポイント

  1. 急性前骨髄球性白血病に対してATRAが開始された患者において、原因不明の発熱、呼吸困難、体重増加、原因不明の低血圧、全身性浮腫、AKIなどを認めたら分化症候群を疑いステロイドを早期に開始する

〈参考文献〉
Stahl M. Differentiation syndrome in acute promyelocytic leukaemia. Br J Haematol. 2019;187:157-162.PMID: 31410848.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。