循環器

鉄欠乏と心不全

ポイント
 心不全入院患者では鉄欠乏状態に対して(フェリチン≦100ng/mL or フェリチン100-299ng/mL かつ TSAT20%以下)、鉄補充(カルボキシマルトース第二鉄静注)を行うと、死亡率は変わらないが心不全の再入院が減る

カンファで話題になったAFFIRM-AHFとメタアナリシスを簡単に読んでみました。

AFFIRM-AHF

国際(ヨーロッパ・南米・シンガポール)・多施設(121施設)・二重盲検・ランダム化比較試験

P:18歳以上の急性心不全で入院+少なくともフロセミド40mg以上の治療+LVEF≦50%+鉄欠乏状態(フェリチン≦100ng/mL or フェリチン100-299ng/mL かつ TSAT20%以下)
I:カルボキシマルトース第二鉄(®フェインジェクト)静注
C:プラセボ
O:52週までの心不全入院と心血管死亡の複合アウトカム

平均年齢は70歳
LVEFは平均32%
貧血は52-57%に合併
フェリチン<100ng/mL 69-73%
TSAT<20% 82-85%
プライマリーアウトカム RR0.79 (95% CI 0.62-1.01)
心不全入院 RR0.74(95% CI 0.58-0.94)
心血管死亡 RR0.96(95% CI 0.70-1.32)

AFFIRM-AHFを含む5つのRCTのメタアナリシス

A:複合アウトカム(心不全入院+心血管死亡) OR0.68(95% CI 0.54-0.84)
B:心不全入院 OR0.61(95% CI 0.47-0.79)
C:全死亡 OR0.97(95% CI 0.73-1.28)
D:心血管死亡 OR0.93(95% CI 0.69-1.27)

まとめ
心不全入院患者では鉄欠乏状態に対して(フェリチン≦100ng/mL or フェリチン100-299ng/mL かつ TSAT20%以下)、鉄補充(カルボキシマルトース第二鉄静注)を行うと、死亡率は変わらないが心不全の再入院が減る

HEART-FID

2023年9月14日追記
新しい国際多施設・二重盲検・ランダム化比較試験が発表されました。
本試験では鉄剤静注群とプラセボ群で有意差はありませんでした。
鉄剤静注が適応となる心不全の重症度と鉄欠乏の程度についてさらなる研究が必要そうです。

PICO

P:18歳以上+LVEF≦40%+Hb9.0mg/dL以上+鉄欠乏状態(フェリチン≦100ng/mL or フェリチン100-300ng/mL かつ TSAT20%以下)+12ヶ月以内に心不全入院 or BNP上昇
I:カルボキシマルトース第二鉄(®フェインジェクト)静注
C:プラセボ
O:12ヶ月以内の心不全入院と死亡、6ヶ月後の6分間歩行距離の複合アウトカム

結果

12ヶ月時点で死亡数はカルボキシマルトース第二鉄群で131名(8.6%)、プラセボ群で158名(10.3%)。心不全入院はそれぞれ297名、332名。6分間歩行の距離の変化は8±60m、4±59m。Win比は1.10(99%CI, 0.99-1.23; P=0.02)で有意差はなかった。
本試験では従来の試験の心不全患者より重症度が低いこと、平均TSATが23%と20%以上の患者が6割を占めていることなどが心不全再入院に差がなかった理由かもしれない。

〈参考文献〉
Ponikowski P. Ferric carboxymaltose for iron deficiency at discharge after acute heart failure: a multicentre, double-blind, randomised, controlled trial. Lancet. 2020;396:1895-1904. PMID: 33197395.

Khan MS. Ferric carboxymaltose for the treatment of iron-deficient heart failure patients: a systematic review and meta-analysis. ESC Heart Fail. 2020;7:3392-3400. PMID: 33586856.

Ferric Carboxymaltose in Heart Failure with Iron Deficiency. N Engl J Med 2023; 389:975-986

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。