内分泌

GLP-1受容体作動薬 胆嚢・胆管疾患のリスク

いくつかのRCTでGLP-1 RAsはプラセボと比べ胆嚢・胆道疾患の発症率が高いことが示されていたが、GLP-1 RAsによるClass effectであるかは不明であった。そこで今回システマティックレビューとメタアナリシスが行われた。

対象

76個のRCT、103371人(平均年齢57.8歳、女性40.5%、平均BMI32.6、平均HbA1c7.8%、2型糖尿病84.4%)

結果

GLP-1受容体作動薬使用群は有意に胆嚢・胆管疾患のリスクが増大した。(RR1.37; 95%CI, 1.23-1.52; I2 = 0%)。
胆石症(RR1.27; 95%CI, 1.10-1.47)
胆嚢炎(RR1.36; 95%CI, 1.14-1.62)
胆道疾患(RR1.55; 95%CI, 1.08-2.22)

高用量群は低用量群と比べリスクが増加
 (RR1.56; 95%CI, 1.36-1.78 vs RR0.99; 95%CI, 0.73-1.33)

26週以上の長期使用群は26週未満の短期使用群と比べリスクが増加
 (RR1.40; 95%CI, 1.26-1.56 vs RR0.79; 95%CI, 0.48-1.31)

*高用量:albiglutide50mg/週、デュラグルチド1.5mg/週、リラグルチド1.8mg/日、セマグルチド皮下注1mg/週、セマグルチド経口7mg/日

*低用量:albiglutide30mg/週、デュラグルチド0.75mg/週、リラグルチド0.6-1.2mg/日、セマグルチド皮下注0.5mg/週、セマグルチド経口3mg/日


減量目的群は2型糖尿病群よりリスクが高かった。
 (RR2.29; 95%CI, 1.64-3.18 vs RR1.27; 95%CI, 1.14-1.43)
*減量目的の場合に高用量を使うことが多いためと考えられる。

リスクは27人/10000人年の増加とわずかであり、GLP-1 RAsのベネフィットと比べて考える必要がある。

機序

GLP-1受容体作動薬はコレシストキニンの分泌を抑制し、胆嚢収縮を抑制し、胆嚢のemptyingを遅延させることで胆石・胆道疾患のリスクを上げうる。

ケースシリーズ(追記2022/9/16)

2005年から2021年のFDAの副作用報告においてGLP-1による急性胆嚢炎のケースが36例報告されていた。年齢の中央値は55歳、エキセナチド21例(®バイエッタ、®ビデュリオン)、デュラグルチド7例(®トルリシティ)、セマグルチド7例(®オゼンピック)、リキシセナチド1例(®リキスミア)。33例は糖尿病に対して使用されていた。17例は使用開始後90日以内に発症していた。30例が胆嚢切除を受けた。28例は改善し、3例は死亡(急性膵炎、肝臓壊死による)、5例のアウトカムは未報告だった。

〈参考文献〉
Association of Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist Use With Risk of Gallbladder and Biliary Diseases: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. JAMA Intern Med. 2022;182:513-519. PMID: 35344001.
New Avenues in the Regulation of Gallbladder Motility-Implications for the Use of Glucagon-Like Peptide-Derived Drugs. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104:2463-2472. PMID: 30137354.
Acute Cholecystitis Associated With the Use of Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists Reported to the US Food and Drug Administration. JAMA Intern Med. 2022 Aug 29. PMID: 36036939.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。