内分泌

悪性腫瘍関連高カルシウム血症 HCM

HCMの方を診療し、2023年に米国内分泌から新しくガイドラインが出ていたので、復習。

概要

高カルシウム血症は悪性腫瘍患者の2-30%に認められる高頻度な電解質異常。
特に非小細胞肺癌乳癌多発性骨髄腫頭頸部の扁平上皮癌卵巣癌腎臓癌で多い。
骨転移病変に対してビスフォスフォネート(BP)製剤やデノスマブ(Dmab)が使われるようになりHCMは減少傾向。
HCMは進行癌に多く、予後不良因子
 高Ca血症の発症から中央生存期間は25-52日。

重症度

mild:血清Ca値 < 12 mg/dL
moderate:血清Ca値 12 ~ 14 mg/dL
severe:血清Ca値 > 14 mg/dL

原因

PTHrP産生腫瘍 80% (humoral hypercalcemia of malignancy : HHM)
 扁平上皮癌(特に肺、頭頸部)、尿路上皮癌(腎癌、膀胱癌)、乳癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌など。
骨溶解性転移 20% (local osteolytic hypercalcemia : LOH)
 乳癌、多発性骨髄腫がほとんどを占める。
活性型ビタミンD産生亢進
 1α水酸化酵素の活性による。腫瘍では悪性リンパ腫がほとんどの原因。
PTH産生
 副甲状腺癌、稀に肺小細胞癌・肺腺癌。

治療

2023年の米国内分泌学会のガイドラインのHCMマネジメントのフローチャートと治療薬(一部改変)。重症度と症状に応じて治療を選択する。
基本的にHCMの治療のエビデンスは乏しい
HCMにおいてBP製剤とデノスマブを直接比較したRCTは存在しない
デノスマブの方が再発が少ない、かつ急性期反応も少ない。
本邦におけるデノスマブ(®ランマーク)の保険適応は多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変であり、HCMは保険適応ではないことに注意。
HCMを悪化させうる因子としてサイアザイド利尿薬、リチウム、脱水、長期臥床、高カルシウム食(>1000mg/day)、カルシウムサプリ、ビタミンD製剤などがあり避ける。

〈参考文献〉
Treatment of Hypercalcemia of Malignancy in Adults: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2023;108:507-528. PMID: 36545746.
Hypercalcemia of Malignancy: An Update on Pathogenesis and Management. N Am J Med Sci. 2015;7):483-93. PMID: 26713296.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。