内分泌

McCune-Albright Syndrome

〈概念〉
McCuneAlbright Syndrome(MAS)は発生過程における体細胞レベルでのGs蛋白のαサブユニット(Gsα)をコードする遺伝子であるGNAS1の点突然変異が原因と考えられている。つまり遺伝性疾患ではない。
GNAS1遺伝子異変がsomaticに起こるため、異なる臓器・異なる組織でモザイク状をなし、多様な症状を呈する。
3徴は皮膚カフェオレ斑線維性骨異形成内分泌障害思春期早発症、先端巨大症、機能性甲状腺結節)。
疾患の正確な疫学は不明だが、有病率は1/10~100万人とされる。
線維性骨異形成のみ(特に単発病変)は稀ではなく、骨良性疾患の7%を占める。

カフェオレ斑
 出生時より認める。2/3に認める。中心線に沿って発生することが多い。ギザギザしていることが多く、”coast of Maine”と呼ばれる。(NF1の場合はスムーズで”coast of California”と呼ばれる。)

内分泌障害
ゴナドトロピン非依存性思春期早発症 
 低年齢より間欠的に出現し、性器出血を起こす。女子の最大85%に認める。一方男子の10−15%のみ。 
 再発性卵巣嚢腫が間欠的にエストロゲンを産生し、乳房腫大・成長発育・性器出血を起こす。
 ただ初期には早発月経のみを認め、乳房腫大や成長発育、骨年齢の促進を伴わないこともある。これは卵巣からの不規則・断続的なエストロゲン分泌によって起こるため、症状が持続しないこともあり、血中ホルモン値の上昇を捉えられないことも多い。
 
 精巣の異常は男性の最大85%に認める。典型的には片側または両側の睾丸腫大。超音波検査では、ライディッヒ細胞やセルトリ細胞の過形成に対応して、高エコーや低エコーの混在性病変と微小結石が認められる

A. Pelvic ultrasound in a girl age seven years, showing a complex unilateral ovarian cyst (defined by cross-hatches). The uterus is prepubertal in size (arrow).
B. Testicular ultrasound in an adult showing a heterogeneous lesion with mixed solid and cystic elements

先端巨大症20% 
 平均診断年齢は24.4歳(3-64歳)と若い。 
 高プロラクチン血症を81%に認める。平均149μg/L(21-600)。

非自己免疫性甲状腺機能亢進症を伴う もしくは伴わない甲状腺疾患 
 2/3に甲状腺腫大、多発結節・嚢胞性病変を認め、そのうち半分が甲状腺機能亢進症を呈する。

甲状腺エコー所見。heterogeneity and a cystic (“Swiss cheese”) appearance。

新生児高コルチゾール血症 
 5%以下に認める稀な重篤な合併症。通常生後1年以内に発生し、気づかれないと死に至ることがある。

FGF23亢進に伴う低P血症、くる病・骨軟化症 3%

線維性骨異形成
 幼弱な骨形成を伴う線維性組織の異常増殖によって骨皮質が萎縮し、骨髄が線維性組織へと置換される疾患。
 それに伴い骨の変形、骨折、機能障害、疼痛を呈する。
 MASのほぼ全例に認める。重症度は様々で単発で無症候のものから、多発性で重度の場合もある。
 生後数年で発生し、小児期に拡大する。15歳以降に新規病変が出現することは稀。
 最も侵されやすいのは頭蓋骨大腿骨近位部
身体の左右差や変形(特に顔面)、易骨折性を呈する。顔面骨の変形(±先端巨大症の合併)により、頭痛・聴神経の圧迫による難聴・視神経圧迫による失明などを呈することがある。脊柱病変により側弯症になることもある。

線維性骨異形成症は四肢に生じると成長期に病的骨折で気づかれることが多い。
 荷重のかからない頭部・顔面骨の病変では顔貌の変化が発見のきっかけとなる。

画像所見ではすりガラス様、嚢胞性病変、境界明瞭な硬化性病変、硬化性と嚢胞性の混合病変など。 
肋骨・骨盤:線維性骨異形成は肋骨の良性拡張病変の最も多い原因。拡張性の骨溶解病変。紡錘状の肋骨拡大。 
四肢:弓状変形。特に荷重がかかる骨に多い。大腿骨頸部の羊飼いの杖変形など。Looser zones 。思春期早発症を併発すると、成長板の融合が早まって低身長になる。 
頭蓋骨:骨の拡張ですりガラス様にみえることがある。

A. Proximal femur FD demonstrating the typical ground-glass appearance with a coxa vara (“shepherd’s crook”) deformity
B. Three-dimensional reconstructed computed tomography (CT) image of a man age 26 years with craniofacial FD and uncontrolled growth hormone excess, leading to macrocephaly and severe facial deformity
C. CT image from a girl age ten years, demonstrating the typical ground glass appearance of craniofacial FD in younger individuals. The optic canals are typically encased in FD (white arrows) without any visual disturbance.
D. CT image from a woman age 40 years, demonstrating typical features of craniofacial FD in an older individual, including a more sclerotic appearance with mixed solid and cystic components. Again, depicted are the optic nerves encased in FD (white arrows) without visual disturbance.
E. 99Technetium bone scintigraphy, posterior-anterior and anterior-posterior views, left and right panels, respectively demonstrating patchy tracer uptake at affected skeletal sites, including the skull, ribs, femur, and tibia (arrows), consistent with a mosaic pattern of expression

IPMN 最大50%に認めるが、悪性化はまれ。
乳がん 女性の場合健常人よりも3.5-4倍多い。発症年齢も通常より若い。

〈治療〉
線維性骨異形成症に対してビスホスホネート静注 
 ゾレドロン酸 ®ゾメタ 4mg/day 6ヵ月ごと パミドロン酸 30mg/day  3日連続 3ヵ月ごと
思春期早発症に対してアロマターゼ阻害薬(レトロゾール) 
 骨年齢が亢進していて、出血が頻繁にある場合に治療する。

〈参考文献〉
Javaid MK. Best practice management guidelines for fibrous dysplasia/McCune-Albright syndrome: a consensus statement from the FD/MAS international consortium. Orphanet J Rare Dis. 2019;14:139. PMID: 31196103.
日内会誌 99:391-393,2010.
In: GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993–2021.2015 Feb 26 [updated 2019 Jun 27]

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。