膵炎後の患者は糖尿病新規発症リスクが高い(1-2割が発症)。
膵炎後糖尿病患者は膵癌発症リスクが高く、2型糖尿病患者よりも死亡率が若干高い。
メトホルミンは死亡率低下と関連があり積極的に使用を検討する。
インスリンは膵炎再発リスクを上げるため、適応を慎重に考える必要がある。
糖尿病の原因は高血圧と同様に原発性と二次性に分けて考えることができる。
二次性糖尿病の原因として膵性糖尿病があり、膵性糖尿病の原因として膵炎後糖尿病(PPDM:post-pancreatitis diabetes mellitus)がある。
PPDMは急性膵炎後のPPDM(PPDM-A)と慢性膵炎によるPPDM-Cに分けられる。
PPDM-Aが80%、PPDM-Cが20%程度を占める。
膵炎罹患患者は糖尿病新規発症リスクが約2倍になる。
急性膵炎発症後2年間フォローアップすると11%が糖尿病を発症。
違う研究では急性膵炎後の23%、慢性膵炎後の30%が糖尿病を発症したという報告もある。
膵炎発症時に糖尿病がなくても、その後の糖尿病発症に注意する必要がある。
PPDM発症のリスクは男性、40歳以下の若年者。
膵炎の重症度はPPDMのリスクとは関連がない。
アルコール性と胆石性膵炎においてPPDMの発症率の差はない。
PPDMの初期はインスリン抵抗性がメインだが、急性膵炎の再発や慢性膵炎への移行に伴いインスリン分泌低下や外分泌機能不全へ病態が変わっていく。
PPDM患者は膵癌発症リスクが2.3倍高い(95%CI 1.12-4.93)。
2型糖尿病患者よりも死亡率が若干高い。
治療に関しては2型糖尿病と同様にメトホルミン使用が推奨される。
PPDM患者に対するメトホルミン使用は死亡率低下と関連していた HR0.22(95%CI 0.09-0.53)。
インスリンは死亡率低下と関連がない。 HR0.86(95%CI 0.40-1.84)。
むしろインスリン使用患者は急性膵炎再発や慢性膵炎の移行率が高かった。HR1.56(95%CI 1.15-2.11)。
インスリンの副作用である低血糖や脂肪蓄積量増加が関連しているかもしれない。
膵炎後の患者は糖尿病新規発症リスクが高い(1-2割が発症)。
膵炎後糖尿病患者は膵癌発症リスクが高く、2型糖尿病患者よりも死亡率が若干高い
メトホルミンは死亡率低下と関連があり積極的に使用する。
インスリンは膵炎再発リスクを上げるため、適応を慎重に考える必要がある。
〈参考文献〉
Petrov MS. DIAGNOSIS OF ENDOCRINE DISEASE: Post-pancreatitis diabetes mellitus: prime time for secondary disease. Eur J Endocrinol. 2021;184:R137-R149. PMID: 33460393.
Cho J. Antidiabetic Medications and Mortality Risk in Individuals With Pancreatic Cancer-Related Diabetes and Postpancreatitis Diabetes: A Nationwide Cohort Study. Diabetes Care. 2019;42:1675-1683. PMID: 31227582.