原発性アルドステロン症(PA)はアルドステロン産生腺腫(APA)と両側副腎過形成による特発性アルドステロン症(IHA)に分けられ、APAは手術、IHAは薬物治療がメインとなる。
APAはACTHに反応するため、IHAとAPAをRapid ACTH負荷試験で鑑別できるとされる。
具体的なカットオフや根拠について文献で勉強してみました。
J Clin Endocrinol Metab. 2011;96:2771-8
2011年の京都大学からの報告ではAPA(23例)、IHA(16例)、Non-PA(20例)を比較。
Rapid ACTH負荷試験を行う前日に1mgデキサメタゾン内服を行い、内因性ACTHの影響を除外している。
APA群はIHA群と比べて明らかにPACが高値かつ前値と比べて上昇している。
J Clin Endocrinol Metab. 2015;100:1837-44
2015年の上海からの報告。スクリーニングのARR30以上、生理食塩水負荷試験でPAC10ng/dL以上の原発性アルドステロン患者。片側性56例(APA+UAH)、両側性39例(BAH)。
前日夜12時に1mgデキサメタゾンを内服、ACTH50IUを投与(日本のコートロシンは25IU)。
PACの0分値は片側性、両側性に差はなかったが30分値以降は有意に片側性でPACが高値であった。コルチゾールの反応に差はなかった。120分値のPAC 77.9ng/dLが感度76,8%、特異度87.2%と最も診断特性が良かった。
Hypertens Res . 2019;42:801-806
2019年の宮崎からの報告。APA22例、IHA18例。
PACはAPAで有意に上昇。PAC/F比も有意にAPA群で高値。術後ACTH負荷後のPAC上昇はほとんどみられていない。
120分値のPAC/F 1.2以上が最も診断特性が高く、感度95.5%・特異度88.9%であった。
J Renin Angiotensin Aldosterone Syst . 2020;21:1470320320919610.
2020年の慈恵医科大学からの報告。27例のAPA、96例のIHA。前値と60分値のPAC、Fを測定。
Rapid ACTH負荷試験でACTH負荷後のPAC477pg/mL以上が感度66.7%、特異度82.1%と最も診断特性が良かったが、血清K、カプトプリル試験後のARR、生理食塩水負荷試験後のPACのほうが診断特性は上であった。
まとめ
原発性アルドステロン症におけるRapid ACTH負荷試験は片側性と両側性の鑑別において有用という報告はあるが、いずれも小規模・単施設であり、プロトコル(1mgデキサメタゾン抑制の有無、採血のタイミング、ACTHの負荷量、カットオフ)に統一性がない。
今回調べた文献ではPAC60分47.7ng/dL、90分37.9ng/dL、120分77.9ng/dL、120分PAC/F1.2など様々なカットオフが報告されていた。現在のプラクティスで行っていないので、1mgデキサメタゾン併用や120分値までの測定の有用性が気になるところ。
さらにPACの測定がCLEIA法に変更されたため、これらの報告と現在のPACの値は異なることに注意が必要。今後より大規模な臨床試験における検討が望まれます。
Rapid ACTH負荷試験は原発性アルドステロンのsubtype診断に有用とされ、様々な報告があるが、現時点で統一されたコンセンサスはない。
今後の大規模研究での検討が望まれる。
〈参考文献〉
Significance of adrenocorticotropin stimulation test in the diagnosis of an aldosterone-producing adenoma. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96:2771-8. PMID: 21752891.
Diagnostic value of ACTH stimulation test in determining the subtypes of primary aldosteronism. J Clin Endocrinol Metab. 2015;100:1837-44. PMID: 25695882.
Efficient screening of patients with aldosterone-producing adenoma using the ACTH stimulation test. Hypertens Res. 2019;42:801-806. PMID: 30622316.
Evaluation of various confirmatory tests for the diagnosis of aldosterone-producing adenoma. J Renin Angiotensin Aldosterone Syst. 2020;21:1470320320919610. PMID: 32370649.
Cortisol Co-Secretion and Clinical Usefulness of ACTH Stimulation Test in Primary Aldosteronism: A Systematic Review and Biases in Epidemiological Studies. Front Endocrinol (Lausanne). 2021;12:645488. PMID: 33796078.