内分泌

SIADHに対する水制限・フロセミド・NaCl内服

SIADHの治療は水制限がガイドラインで第一選択として推奨されている。
フロセミドとNaCl投与は第二選択として記載されている。
これまでRCTは実施されたことがなかったのでタイの病院単施設でOpen labelのRCTが行われた(The EFFUSE-FLUID Trial)

P: 18歳以上の血清Na≦130 mmol/LのSIADHの患者
I: ①水制限のみ ②水制限+フロセミド ③水制限+フロセミド+NaCl
O: day4,7,28の血清Naの変化


SIADHの診断は
①血清浸透圧<275mOsm/kg ②尿浸透圧>100mOsm/kg ③病歴と診察で臨床的にeuvolemia ④尿中Na>30mmol/L ⑤甲状腺機能低下症・副腎不全・eGFR<60mL/min/1.73m2・利尿薬投与がない

介入
 水制限は尿中(Na+K)/血清Na≦1では水分制限1L/日、尿中(Na+K)/血清Na>1では500mL/日。
 フロセミド1日20mg内服で開始。水分バランスが-500mL/日になるように必要に応じて40mgに増量。
 塩化ナトリウムは3g分3で投与。

水制限 n=31
水制限+フロセミド n=30
水制限+フロセミド+NaCl n=31

平均年齢は60歳
悪性腫瘍51%、薬剤性37%、神経疾患37%
肺疾患33%、HIV感染11%、特発性7%

尿中(Na+K)/血清Na≦1 57%
尿中(Na+K)/血清Na>1 43%

3群間でday4,28においてのNaの変化に差はなかった。
day7では水制限+フロセミド+NaCl投与群で有意に上昇した。
血清Na>130,135を達成するタイミングは3群間で差はなかった。

有意差はなかったがフロセミド投与群でAKI発生率が多い傾向。
低K血症はフロセミド投与群で有意に増えた。

〈まとめ〉
SIADHの患者に対して水制限に加えてフロセミドとNaCl投与はNa補正において有意な差はなかった。
水制限で4日目に平均5mmol/L程度Naは上昇する。


実臨床ではSIADHにフロセミドを投与しているプラクティスを周囲ではあまり見かけない。
このstudyからもあまりメリットがなさそう。むしろ低K血症・AKIのリスクを増やしそう。
塩分負荷もよく行われていますが、食事から必要量の塩分が取れていれば要らなさそう。
水制限でだめならSALT-1,2試験で有用とされたトルバプタンが選択肢でしょうか。

〈参考文献〉
Krisanapan P. Efficacy of Furosemide, Oral Sodium Chloride, and Fluid Restriction for Treatment of Syndrome of Inappropriate Antidiuresis (SIAD): An Open-label Randomized Controlled Study (The EFFUSE-FLUID Trial). Am J Kidney Dis. 2020 Aug;76(2):203-212. PMID: 32199708.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。