SITSHという状態を認識し、適切に鑑別を行う。
約8割は偽性SITSHであるので慎重にフォロー&別の測定系でも採血を行う
真性SITSHと判断したらTSH産生下垂体腺腫と甲状腺ホルモン不応症の2つ
SITSHとはFT4(±FT3)高値にも関わらずTSHが抑制されていない状態のことです。
バセドウ病と誤診されて抗甲状腺薬で治療されるケースもあるようなので、まずはSITSHではないかと気づくことが重要です。
鑑別の流れはまず偽性SITSHと真性SITSHを見分けることです。
偽性SITSHのほうが頻度が多い(8割程度)ため注意です。
偽性SITSH
①破壊性甲状腺炎の発症初期やバセドウ病の再発初期にFT4が上昇しているにも関わらずTSHがまだ基準値内にとどまっている場合。これは1ヶ月後に再検査すれば解決する。
②チラージン内服中にFT4が上昇して、まだTSHが下がっていないとき(コンプライアンス不良)
③抗T4抗体、抗T3抗体、抗TSH抗体、ヒト抗マウス抗体(HAMA)など測定系に干渉する自己抗体が存在する場合。疑ったらPEGによる処理を行い抗体を除去して測定する。
④家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症
T4やT3に対して親和性が異常に高いアルブミンを有するため偽性高値となる。日本では稀。
⑤アミオダロンやヘパリンなど薬剤性
偽性を除外するために1ヶ月後と3ヶ月後の再検査が望ましく、再検査の場合は初回の測定法と異なる測定法(キット)を用いることが推奨されている。
真性SITSH
偽性SITSHを除外して真性SITSHと診断した場合の鑑別は2つでTSH産生下垂体腺腫(TSHoma)と甲状腺ホルモン不応症(RTH)です。
鑑別で重要となるのは家族歴(あればRTHを疑う)、下垂体造影MRI(TSHomaでは8割程度がマクロアデノーマ)、TRH負荷試験(TSHomaでは典型的には頂値が2倍以下の低反応、RTHでは正常反応で10倍程度上昇する)、TRβ遺伝子解析です。
注意点としてはRTHに下垂体偶発腫が合併している可能性があること。TRH負荷試験でマクロアデノーマでは下垂体卒中を誘発する危険があるため、事前に下垂体造影MRIの撮影をしておいたほうがよいこと。ソマトスタチンアナログは短期では両者ともTSHが低下するが、連続負荷では鑑別可能とする報告もある。
SITSHという状態を認識し、適切に鑑別を行う。
約8割は偽性SITSHであるので慎重にフォロー&別の測定系でも採血を行う
真性SITSHと判断したらTSH産生下垂体腺腫と甲状腺ホルモン不応症の2つ
〈参考文献〉
日本甲状腺学会 甲状腺ホルモン不応症(RTHβ)診断基準
TSH産生下垂体腺腫 脳神経外科, 46(12) : 1053-1063, 2018