・TSHはαサブユニットとβサブユニットからなる2量体で、αサブユニットはLH・FSH・hCGと共通。
・TSHには日内変動があり、日中低く・夜間高くなる。
・TSHの分泌亢進はTRH・レプチン。分泌抑制は甲状腺ホルモン・ソマトスタチン・グルココルチコイド・ドパミン・炎症性サイトカイン。
TSHはLH・FSH・CG(絨毛性ゴナドトロピン)と同様にαサブユニット(92アミノ酸)とβサブユニット(118アミノ酸)をもつ2量体。
αサブユニットはLH・FSH・CG(絨毛性ゴナドトロピン)と共通。
βサブユニットは各ホルモンに特徴的で、その作用を規定する。
αサブユニットは2箇所、βサブユニットは1箇所糖化を受ける場所があり、TSHの活性と関係がある。
下垂体前葉においてTSH産生細胞は5%程度。
euthyroidの場合はTSHは100-400mU/日産生され、血中の半減期は約50分。
TSHの分泌には日内変動があり、夜間は日中の最大2倍程度まで上昇する。
ピークは23時-5時にきて、Nadirは11時頃。
TSHの夜間の上昇は、睡眠によって抑制されるが、逆に睡眠不足はTSHの分泌を促進する。
視床下部・下垂体性甲状腺機能低下症の患者では夜間のピークが消失する。これは日中のTSHが正常にもかかわらず甲状腺機能が低下している原因かもしれない。
TSHの概日リズムやピークについての機序はわかっていない。
生理的なコルチゾールはTSHの概日リズムに影響するが、その周波数には影響を与えない。
副腎不全患者では日中のTSHが上昇して概日リズムがなくなる。
ステロイドを補充すると日中のTSHが低下して、概日リズムが再び現れる。
早朝から日中のコルチゾールの上昇がTSHレベルを低下させ、概日リズムを形成している可能性がある。
TSHの正常範囲は集団においては幅広いが個々人においては厳密にコントロールされていて、0.75mU/Lの範囲内の誤差しか生じない。
TSHの分泌亢進:TRH、レプチン、夜間
TSHの分泌抑制:甲状腺ホルモン、ソマトスタチン、ドパミン、グルココルチコイド、TNF・IL-6
健常人にTRHを投与すると5分後からTSHが上昇して20-30分後にピークが来る。2時間後にもとのレベルまで戻る。
ソマトスタチンアナログを投与するとTSHのピークや周波数が減少。夜間のピークも消失する。長期間ソマトスタチンアナログを投与しても甲状腺機能低下症は起こらない。これは甲状腺ホルモンのフィードバックによる代償によるものと考えられる。
GHの欠乏はTRHに対するTSHの反応を増加させるが、GHの投与や内因性のGH過剰(先端巨大症)は、おそらくGHが視床下部のソマトスタチン放出を刺激するため、TSH分泌を減少させる。
ドーパミンはTSHの基礎分泌とTRH刺激によるTSH分泌を抑制する。ドーパミンを投与するとTSHパルスの振幅が急速に抑制されるが、TSHパルスの頻度には影響を与えず、夜間のTSHサージが消失する。ドーパミン拮抗薬の投与では男性よりも女性のほうがTSHの上昇がみられやすい。ドーパミンの短期間の投与ではTSH分泌は抑制されるが、長期投与で甲状腺機能低下症はみられない。これも甲状腺ホルモンのフィードバックによる代償と考えられる。
T3投与の数時間以内にTSH分泌は抑制される。
グルココルチコイドは下垂体において直接TSH分泌を抑制している可能性がある。クッシング症候群や長期間のステロイド投与を受けている患者ではTSHとT4レベルは低下していることがある。
レプチンを投与するとTRHを介してTSHレベルが上昇する。逆に空腹時のレプチン低下はTSHレベルの低下に役立っている可能性がある。レプチンとTSHの概日リズムは似ている。
TNFやIL-6はTSHを低下させる。
TSHomaではβサブユニットよりもαサブユニットのほうを多く産生するため、αサブユニット/TSHが1以上を示す。ただこれはゴナドトロピン産生が亢進している更年期女性ではαサブユニットが高値のため使えない。
TRH負荷試験に対する健常人や各疾患のTSHの反応は下記のようになる。
・TSHはαサブユニットとβサブユニットからなる2量体で、αサブユニットはLH・FSH・hCGと共通。
・TSHには日内変動があり、日中低く・夜間高くなる。
・TSHの分泌亢進はTRH・レプチン。分泌抑制は甲状腺ホルモン・ソマトスタチン・グルココルチコイド・ドパミン・炎症性サイトカイン。
〈参考文献〉
The Pituitary, Fourth Edition “Thyroid-Stimulating Hormone”
Roelfsema F. Thyrotropin secretion patterns in health and disease. Endocr Rev. 2013;34:619-57. PMID: 23575764.
Andersen S. Narrow individual variations in serum T(4) and T(3) in normal subjects: a clue to the understanding of subclinical thyroid disease. J Clin Endocrinol Metab. 2002;87:1068-72. PMID:11889165.